わくわく題詠鳩の会

◆ 鳩の会について ◆

・芭蕉会議の公式句会です。
・会員ならどなたでも参加できます。
・目的は佳句・悪句の判断力の涵養です。
・奇数月の月末〆切で兼題(二題)が出題されます。兼題一覧と解説を参照してください。会報も御覧ください。
・一題を選び、一句投句してください。
鳩の会への投稿メールアドレスは入会時および芭蕉会議メールにてお送りいたします。

◆ 兼題
※ 兼題は二題、内一題を選び1句を投句して下さい。
2023年5月末日〆切 五月雨・あやめ 兼題解説
2023年7月末日〆切 蛍・瓜 兼題解説
2023年9月末日〆切 萩・秋の暮 兼題解説
2023年11月末日〆切 千鳥・帰り花 兼題解説
2024年1月末日〆切 雪・鷹 兼題解説
2024年3月末日〆切 行く春・桜 兼題解説

鳩の会会報114(令和5年3月末締切分)
兼題 陽炎・白魚
【Advice】 陽炎は和歌において〈あるかなきかのもの、実体のないものの譬え〉であった。動くはずのない羅漢像を躍らせる和子さんの句に学んでほしい。蛙星さんの糸遊は現代は陽炎と同じ扱いを受けるが、原義は〈蜘蛛の糸が風と光によって見えたり見えなかったりする現象〉。よって陽炎を用いるほうがより適切だったか。白魚では喜美子さんの「変幻自在」の句が今回の収穫。みんなで反芻するに価すると思う。
 句はABC三つの符合で評価しています。その意味するところは以下の通りです。
A:省略が利いて、抒情あきらかな句
B:季感が備わるスケッチ
C:焦点定まらぬつぶやき
A 陽炎に五百羅漢が躍るごと     和子
「陽炎」の本質をよくつかんだ句。季感を存分に描いた名句だが、初五「陽炎や」という手もある。
A ふり向きもせず陽炎へ消えゆけり   ひろし
ありそうな物語の一コマで、表現も整っている。別れを描いたと踏み込んで鑑賞してみたが、自信がない。連句の付句ならば、前後の句で解決できるのだが。
A 陽炎や駄菓子屋むかし路地裏に     京子
思い出の駄菓子屋、今はないんだね。「陽炎」が追懐の効果を出している。
B 糸遊のはるかに見ゆる観覧車     蛙星
「陽炎」ならば「立つ」だろうから、「糸遊」が「見ゆる」とするこの句は「光に乱れる蜘蛛の糸」か。日本語はむずかしい。
B 陽炎へる古今伝授の昔あり     千年
「古今伝授」の「間(部屋)」とか「里」とかいえば連想しやすいが、「昔」としたのであいまいになった。
B 陽炎や白砂白水阿弥陀堂       ひぐらし
いわき市の国宝「白水阿弥陀堂」とその歴史を「陽炎」によって浮かび上がらせた句だろう。ただし「白砂白水」と続けているので知識のない読者にはわかりにくくなった。
B シナイ側陽炎激しスエズかな     鹿鳴
恥ずかしながら「シナイ側」がわからなかったが、「スエズかな」と結ばれているので〈シナイ半島側〉と推測できた。船で世界をめぐって仕事をしてきた作者なので、こんな大景を描けるのだろう。〈見てみたい〉と読者に思わせるのは手腕である。結びの「かな」はやや重たい印象。
B かげろふや繋ぎし母の手の記憶     馨子
この「かげろふ」は眼前の景色とみなければならぬが、同時に、末尾の「記憶」とほぼ同義なのだろう。老いた母か、幼いころの作者の手をひく若々しい母か。そのあたりを絞り込みたかった。
B かげろひの土手行くおさげの女子高生  ちちろ
春に似合う取り合わせのひとつではある。
B 弟橘媛沖ゆく船のかげろへる      瑛子
ヤマトタケルの妃である「弟橘媛」。海神を鎮めるために海中に身を投じて、東国平定におもむくタケルの船の安全を守った。「さねさし相模の小野に燃ゆる火の・・・」とか「あずまはや」とか、古典の授業を思い出させてなつかしい。作者の住まいがこの舞台の海に近いことを知っているので駄弁を弄してみた。一句は「弟橘媛」で切れてしまって、かぎろう船との接点が弱いのが難点。
B みなとみらいあの日の友の陽炎へり  梨花
陽炎は見えていても実態のないものの譬え。「あの日の友」がもう少し描かれればおもしろい。
B かげろふや畑中の道にゆらゆらり      美雪
「軽み」を唱導した芭蕉晩年に広瀬惟然なる弟子がいる。その作者の軽妙がよみがえったかのような作。こういう句があってよい。
B 若者にかげろふ立ちぬプラカード      憲
届いた句稿には「かぎろへる若者らプラカードを」とあって韻律不足だったので、さかのぼって確認したところ、「若者に」の句にたどり着いた。これなら整っているので、こちらを採用。ただし、プラカードの内容がわからないので減点。
C かげろふに夢を形へ搭乗口     ミチヨ
「夢を形へ」がわからない。「搭乗口」にヒントがありそうだが、C A とも乗客ともとれて迷ってしまった。
C 陽炎や著書の跋文書き足らず      真美
どういう情景なのか、わからなかった。
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A 白魚の群れて変幻自在追ふ     喜美子
末尾「追ふ」の主語は作者の眼だろう。「変幻自在」という描写もまことに的確。
B 白魚に黄身のせ醤油たらしけり      由美
白魚はオドリグイとカマアゲを楽しんだ記憶があるが、この句の「黄味」は鶏卵のそれか。このような料理、食べ方があるのだろうネ。
B 白魚丼窓にきらりと相模湾     つゆ草
「白魚丼」と「相模湾」はよく似合うが、似合いすぎる点にもの足りなさもある。
B 白魚や海道沿ひの小さき店        貴美
つゆ草さんの句と同じで、「白魚」に似合いすぎる「海道沿ひ」と「小さき店」。そこがもの足りない。
B 白魚やいまひと時を言祝ぎぬ      窓花
誰が何の祝いを述べたのかがわかるとよいのだが。
B 目をつむり喉で白魚喰ひにけり      海星
たぶんオドリグイの感動を詠んだのだろう。「喉で」「喰ひ」に作者の意図を感じるが、その効果は平均的。
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