わくわく題詠鳩の会

◆ 鳩の会について ◆

・芭蕉会議の公式句会です。
・会員ならどなたでも参加できます。
・目的は佳句・悪句の判断力の涵養です。
・奇数月の月末〆切で兼題(二題)が出題されます。兼題一覧と解説を参照してください。会報も御覧ください。
・一題を選び、一句投句してください。
鳩の会への投稿メールアドレスは入会時および芭蕉会議メールにてお送りいたします。

◆ 兼題
※ 兼題は二題、内一題を選び1句を投句して下さい。
2025年3月末日〆切 春雨・山吹 兼題解説

鳩の会会報122(令和7年3月末締切分)
春雨・山吹(款冬)
【Advice】 「わくわく題詠鳩の会」は都合により年間の回数を減らしていただいたのに、掲載が遅くなりまして申し訳ありません。太神楽の海老一染之助、染太郎ではありませんが、「その分、評言を長めさせていただいております」ので御参考になさってください。少しずつ調子をあげていきます。皆さまも日々お大切に。
 句の評価はABC三つの符合で評価しています。その意味するところは以下の通りです。
A:省略が利いて、抒情あきらかな句
B:季感が備わるスケッチ
C:焦点定まらぬつぶやき
A 本牧や沖売り舟も春の雨    鹿鳴
「沖売り舟」は沖合にいる船に近づいて船中で必要なものを売る仕事。「春の雨」を降らせる景色としてなかなか美しいものがある。「本牧」という地域の選択もみごと。この作者ならではの抒情。
A 耳掻きの膝なつかしや春の雨    千年
「なつかし」は〈心ひかれる慕わしさ〉だが、中世以降、〈懐旧の思い〉をいうようになった。この句は艶っぽいから後者か。ボクも母親の膝に頭を置いた記憶はある。
A 春雨や傘打つ音のやはらかき    貴美
名句の第一条件である平明がこの句にはある。つまり語法が正しいということ。詠嘆の「や」がみごとです。
A 春雨やきのふふるひし土香る    由美
平仮名ゆえに戸惑うが、「昨日篩ひ(振るひ)し」と解釈した。丁寧に振りかけた新しい土が期待通りに雨に香っているのだろう。これまた詠嘆の「や」が効果的だ。
B 春雨や君の爪弾くアルペジオ    蛙星
連続する雨音の比喩は確かに「アルペジオ」がふさわしい気がする。そこで、詠嘆の「や」があるから「春雨」を詠んだ句と思いたいが、「君が爪弾く」とあるために、「春雨」は弦楽器の音色の比喩かという迷いが生まれる。この迷いは語法の検討で解決する気もするが、読者が手を出すのはむずかしい。
B 春雨や濡れし髪の毛指で梳き    ちちろ
「濡れし」と過去にするより「濡るる」と現在進行形にする方がリアルだと思う。
B 春雨や朱の道行の遠ざかる    つゆ草
「道行(みちゆき)」は文脈から和服の外出コートと想像されるが、本来多義語なので、和服とわかる工夫をしなければ読者が迷う。「遠ざかる」意図はわかりにくいので、これを捨てて、袖や襟などに注目して描き直した方がよい。
B 春雨を来て傘たたむ廃寺展    eiko
「廃寺展」が大まか(rough)ゆえ映像を結びにくい。それは出土品など細部に言及することで解決する可能性あり。
B 春雨や鈴なりの花彩りし    窓花
詠嘆の「や」で失敗した例。つまり、読者は「春雨」と「鈴なりの花」のどちらに焦点があるのか混乱する。仮に「や」を捨てれば「鈴なりの花を彩る春の雨」となって、「春の雨」を詠んだことになる。ちなみに「鈴なりの花」にも季があるはずで、全体に取捨選択が出来ていない気がする。これを解決するには省略を学ぶことである。
B 野良猫と信号待ちの春の雨    真美
「野良猫」が「信号待ち」するというのはおもしろいが、「春の雨」が利いていない(投げ込んだだけのような)気がする。
B 万蕾を揺らす春雨天満宮    エール
きれいな絵柄だと思う。「天満宮」だから「万蕾」は梅か。とすれば、そこにも季が隠れていて後味が悪い。「万蕾」を言外に出せば余韻が生まれるが、捨てる勇気がありや無し。
B 春雨や引越した街蘇る    京子
「引越した町」が曖昧。誰かが越して居なくなった町、転居先の町などあれこれ迷って困る。
B あれは子よ親の涙で卒業す    安愚楽
「春の雨」でも「山吹」でもなく「卒業」の句が混じっていた。勘違いとみて言及を保留します。
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B 山吹の眩しき朝や病癒ゆ    馨子
〈病が癒えた朝に見る山吹の眩しいこと〉というふうに詠む方が理に適っているのだが。
B 白山吹こんなに咲かせ逝きし父    梨花
事実に忠実なために報告に了ってしまった。
B ななへやへしずのめささぐかがみぐさ    ひぐらし
ことば遊びとみた。漢字まじりにすると〈七重八重賤の女捧ぐ鏡草〉となる。「鏡草」は鏡餅の上に置く大根の輪切り(新年)・山吹(春)・浮き草(夏)・朝顔(秋)その他異名が多い。そこに兼題「山吹」は含まれているものの、平明・写実に頼る俳句の世界では扱いにくい日本語。
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