わくわく題詠鳩の会会報 46   ホーム
鳩ノ会会報46
兼題 凍鶴・竜の玉・雪間
生きとしいけるもの、いづれか歌を詠まざりける
(貫之・古今仮名序)
【凍鶴】凍った片足で立つ鶴の形容。鶴でも同じ冬季。
◎人許すやうに凍鶴羽根広げ 礒部 和子 画竜点睛を得たり。
◎凍て鶴の丹色残して暮れゆけり ひぐらし 「暮れにけり」
○凍鶴やシャッターの音浴びてをり 尾崎喜美子 「凍鶴の」「聞いてをり」
○凍鶴や沼を眺めてまた戻る 菅原 宏通 「凍鶴の」。「また」は無駄。
 凍鶴のすでに限界かもしれぬ 安居 正浩 「凍鶴や」
 凍鶴の耐へる姿になりてより 根本 文子 「より」落ち着かず。
 身ひとつを整へてをり冬の鶴 水野千寿子 「身ひとつ」をより具体的に。
 凍鶴やピアノ線かや細き足 谷  美雪 「ピアノ線」は誇張しすぎ。
 凍鶴を假屋崎省吾が見ておりぬ 大江 月子 こういう句があってよし。
 日の差して凍鶴瞼ゆるめしよ 梅田ひろし 「凍鶴の瞼ゆるめし日差しかな」
 ひとつひとつ孤独の形冬の鶴 清水さち子 「ひとつひとつ」落ち着かず。
 雪原の高僧に見ゆ凍鶴よ 天野喜代子 「凍鶴の修行僧にも見えて来し」
 舞ひ終へてゆるがぬ鶴は凍てにけり 五十嵐信代 「ゆるがぬ鶴」わかりにくし。
 凍鶴や思ひをしまひまた佇み 米田かずみ 観察不足。
 凍鶴の足より影の凍て始む 大原 芳村 「足の影より」
 月落ちて首を翼へ凍の鶴 吉田いろは 発見に乏し。
 凍鶴は朝靄の中に凛と立ち 中村美智子 発見に乏し。
 凍鶴のまこと絵姿ただ黙す 柴田  憲 発見に乏し。
 凍鶴の孤影動かず月一輪 松村  實 発見に乏し。
 凍鶴のあとひと足の重さかな 鷲田 裕克 発見に乏し。
 凍鶴の一声恋の合図らし 金井  巧 発見に乏し。
 凍鶴を振り返りつつ一人旅 櫻木 とみ 発見に乏し。
 さざ波を感じ凍鶴静かなり 小出 富子 「静かなり」は無駄。
 凍鶴や頑なまでに意志強し つゆ草 「意志強し」は無駄。
 生ありて羽毛吹かれて凍鶴よ 西野 由美 「生ありて」無駄。
 風向ひ立ちて凍鶴季を待つ 尾崎 弘三 「季を待つ」は無駄。
 凍鶴の一羽は山を仰ぎけり 千年 「一羽は」は無駄。
 凍鶴の喉動きては又凍てり ちちろ 「又凍てり」は無駄。
 凍鶴の一脚に意志あるごとし 堀 眞智子 「意志あるごとし」は無駄。
 丹頂の園舎に凍てて何おもふ 堀口 希望 「何おもふ」は無駄。
 凍鶴や漂泊の人山頭火 天野 さら 「漂泊の人」は無駄。
【竜の玉】蛇の髯(ユリ科常緑多年草)の実。紫紺(瑠璃色)。
◎気づけない自分の長所竜の玉 西野 由美 「気づかない」
○老身に子ども潜みて竜の玉 水野千寿子 思い当たる心なり。
○小さきもの地球に似たる竜の玉 大江 月子 新鮮なり。
○竜の玉一人遊んで日が暮れて 吉田いろは 「一人遊びの日暮れけり」
○ぬかるみを避けて足置く竜の玉 中村美智子 「置く足」
○竜の玉幼なじみの訃報来る 金井  巧 安定した感慨。
 一隅の変はらぬままに竜の玉 根本 文子 「変はることなし」
 人のこと祈れる齢竜の玉 安居 正浩 「祈る齢に」
 竜の玉横目に猫の散歩道 つゆ草 「散歩かな」
 竜の玉繋げて母の首飾り 谷  美雪 「母に」
 孫の笑顔見たさに拾ふはずみ玉 礒部 和子 「見たくて」
 碧き皮むきてはずます竜の玉 天野喜代子 「鞠つきの記憶の鞠や竜の玉」
 竜の玉マイブルーヘヴンの色をして 天野 さら 「マイブルーヘヴン色して竜の玉」
 一輪車少女遮る竜の玉 小出 富子 「遮る」の主語は何か。
 疎開児のとほき想い出龍の玉 松村  實 穏当な懐旧。
 五十年ぶりの産土竜の玉 堀口 希望 穏当な懐旧。
 幼き日指輪にしたり竜の玉 米田かずみ 穏当な懐旧。
 鬱々と世を窺ひて龍の玉 梅田ひろし 観念的なり。
 背負ひゐる荷の重きこと龍の玉 清水さち子 取合せに距離あり。
 信楽のふる狸ゐて竜の玉 ひぐらし 庭などのスケッチか。
 竜の玉住みかは広くなりにけり 千年 取合せに距離あり。
 竜の玉宇宙の滴ごとくあり 鷲田 裕克 譬喩としてわかる。
 竜の玉青く光らせ鳥去りぬ 尾崎喜美子 咥えて去ったということか。
 我が師系波郷勝実や竜の玉 大原 芳村 なんとなくわかる。
 老いし母はづませてみる竜の玉 ちちろ 老母が利かず。
 鳥知るや龍の玉ひそかに碧づく 五十嵐信代 「鳥知るや」が利かず。
 竜の髭探りて蒼きはづみ玉 柴田  憲 発見に乏し。
 竜の玉青深くして光あり 堀 眞智子 発見に乏し。
 青藍や青き葉に入る竜の玉 尾崎 弘三 発見に乏し。
 雨止みて朝日を乗せる龍の玉 櫻木 とみ 発見に乏し。
 竜の玉誰に聞いてもわからない 菅原 宏通 わかってから詠むべし。
【雪間】残雪の中の、雪解けした隙間。
○雪間には愛の形の道祖神 根本 文子 「愛の形」抽象的だがわかる。
○忘れゐしこと思い出す雪間かな 水野千寿子 心境よく見ゆ。
○脱藩の道を歩まん雪間草 千年 景情整う。
 遠き山近づく力なき雪間 小出 富子 どこで切れば意が通じるか。
 高原の雪間に揺るる小さき笹 つゆ草 笹の句になった。
 雪間よりおむすび村に行けさうな 谷  美雪 「おむすび村に行けさうな雪間かな」
 埋み菜の日に伸び初むる雪間畑 大江 月子 「日に」は無駄。
 阿弥陀堂までとびとびの雪間かな 吉田いろは 安定した景なり。
 駆け回る子等に雪間のひろがれり 梅田ひろし 安定した景なり。
 大病の快癒のきざし雪間萌 西野 由美 「大病に」「萌ゆ」
 銀輪も回り道する雪間草 中村美智子 「銀輪の」
 緩んだり尖つたりの雪のひま 清水さち子 「尖つたりして」
 黄昏ればまた氷りゐし雪間かな 五十嵐信代 「ひかげれば」「ゐる」
 一歳の子を立たせ撮る雪間かな 堀口 希望 斬新な景。
 雪間はやところどころの温みかな 柴田  憲 発見に乏し。
 谷川の流れ光れる雪間かな 松村  實 発見に乏し。
 天然の造形のきわみ雪間かな 天野 さら 発見に乏し。
 一筋の湯気立ち上る雪間かな ひぐらし 発見に乏し。
 誘はれて弾み出掛ける雪間かな 堀 眞智子 発見に乏し。
 山鳥のつめ跡残す雪間かな ちちろ 発見に乏し。
 雪のひま模様に見入る里帰り 尾崎喜美子 発見に乏し。
 みちのくやところどころに見る雪間 菅原 宏通 発見に乏し。
 飛び越えし雪間にするり滑り込む 礒部 和子 発見に乏し。
 信濃川大曲りせし雪間かな 大原 芳村 発見に乏し。
 畝幾重帯解くかたちの一雪間 米田かずみ 描写不足。
 雪間より飛び出す子らの影と声 金井  巧 「影と声」利かず。
 晴れやかに雪間に立ちて見る雪間 安居 正浩 「晴れやかに」が利かず。
 晴衣着て雪間をそつと高草履 櫻木 とみ 晴着の句になった。
 雪間よりのぞく青い芽ふきのたう 天野喜代子 蕗の薹の句になった。
 奔放は垣間見せずに雪間かな 鷲田 裕克 句意難解。
 雪間あり草の芽顔出し土香る 尾崎 弘三 焦点が三つに分かれた。
海紅切絵図
凍鶴の立つを母とも思ひみる 海 紅
ことごとく昔話や竜の玉
七つ八つ雪間をよぎり神前へ
 
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