わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 涼し・昼顔 ◆

涼し(すずし)
芭蕉句 うら見せて涼しき滝の心哉(宗祇戻)
たのしさや青田に涼む水の音(真蹟懐紙写)
すヾしさを絵にうつしけり嵯峨の竹(住吉物語)
此のあたり目に見ゆる物はみなすヾし(曠野後)
〔本意・形状〕 「涼し」は、夏の暑さの中でも、朝夕の風が吹くときや、通りの打ち水など、ふと涼しく感じることがある。また、心理的な涼しさもあり、鐘の音や月光、などにも涼しさを感じる。連歌俳諧時代から季題とされ、色々の折に涼しさを見出して暑さを免れる心の涼しさでもある。
〔季題の歴史〕 「すヾしやと草むらごとに立ち寄れば暑さぞまさる常夏の花」紀貫之」。もともと「納涼」を夏の題としてそこから「涼し」を夏に許用することになった。「夫木和歌集」にも「納涼」の題下に「涼し」と詠んだ例歌がいくつも見られる(『基本季語五00選』)。
〔類題 傍題〕 涼気、涼味、朝涼(あさすず)、夕涼(ゆうすず)、宵涼し、晩涼、涼夜
〔例   句〕 忘れずば佐夜の中山にて涼め    芭蕉
涼しさや鐘をはなるるかねの声   蕪村
じだらくに寐れば涼しき夕かな   宗次
自から風の涼しき余生かな     虚子
目を閉じて無念にあれば涼しかり  みどり女
昼顔(ひるがお・ひるがほ)
芭蕉句 昼顔に米つき涼むあはれ也(続きの原)
鼓子花(ひるがほ)の短夜ねぶる昼間哉(尚白筆懐紙)
ひるがほに昼寐せうもの床の山(韻塞)
子ども等よ昼顔咲きぬ瓜むかん(藤の実)
〔本意・形状〕 明るい野原や砂浜、路地など、どこにでも咲く親しい花である。
初夏、蔓性で朝顔を小型にしたような薄紅色の花を咲かせる。
〔季題の歴史〕 『毛吹草』(正保二)『増山の井』(寛文七)以下に六月として所出。
〔類題 傍題〕 なし
〔例   句〕 とうふ屋が来る昼顔が咲きにけり    一茶
ひるがほのほとりによべの渚あり    石田波郷
昼顔や渋民村に家少し         飴山實
昼顔や流浪はわれにゆるされず     鈴木真砂女
きさがたのひるがほ紅をしぼりけり   黒田杏子
(根本梨花)


このサイトについてサイトポリシー