涼し(すずし) |
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芭蕉句 | うら見せて涼しき滝の心哉(宗祇戻) たのしさや青田に涼む水の音(真蹟懐紙写) すヾしさを絵にうつしけり嵯峨の竹(住吉物語) 此のあたり目に見ゆる物はみなすヾし(曠野後) |
〔本意・形状〕 | 「涼し」は、夏の暑さの中でも、朝夕の風が吹くときや、通りの打ち水など、ふと涼しく感じることがある。また、心理的な涼しさもあり、鐘の音や月光、などにも涼しさを感じる。連歌俳諧時代から季題とされ、色々の折に涼しさを見出して暑さを免れる心の涼しさでもある。 |
〔季題の歴史〕 | 「すヾしやと草むらごとに立ち寄れば暑さぞまさる常夏の花」紀貫之」。もともと「納涼」を夏の題としてそこから「涼し」を夏に許用することになった。「夫木和歌集」にも「納涼」の題下に「涼し」と詠んだ例歌がいくつも見られる(『基本季語五00選』)。 |
〔類題 傍題〕 | 涼気、涼味、朝涼(あさすず)、夕涼(ゆうすず)、宵涼し、晩涼、涼夜 |
〔例 句〕 | 忘れずば佐夜の中山にて涼め 芭蕉 涼しさや鐘をはなるるかねの声 蕪村 じだらくに寐れば涼しき夕かな 宗次 自から風の涼しき余生かな 虚子 目を閉じて無念にあれば涼しかり みどり女 |
昼顔(ひるがお・ひるがほ) | |
芭蕉句 | 昼顔に米つき涼むあはれ也(続きの原) 鼓子花(ひるがほ)の短夜ねぶる昼間哉(尚白筆懐紙) ひるがほに昼寐せうもの床の山(韻塞) 子ども等よ昼顔咲きぬ瓜むかん(藤の実) |
〔本意・形状〕 | 明るい野原や砂浜、路地など、どこにでも咲く親しい花である。 初夏、蔓性で朝顔を小型にしたような薄紅色の花を咲かせる。 |
〔季題の歴史〕 | 『毛吹草』(正保二)『増山の井』(寛文七)以下に六月として所出。 |
〔類題 傍題〕 | なし |
〔例 句〕 | とうふ屋が来る昼顔が咲きにけり 一茶 ひるがほのほとりによべの渚あり 石田波郷 昼顔や渋民村に家少し 飴山實 昼顔や流浪はわれにゆるされず 鈴木真砂女 きさがたのひるがほ紅をしぼりけり 黒田杏子 |
(根本梨花) |