わくわく題詠鳩の会会報65   ホーム
鳩ノ会会報65(平成27年1月末締切分)
兼題 スケート・嫁が君


◎スケートや止まる術まだ知らぬひと   ひぐらし
【評】「止まる術まだ知らぬひと」にスケート初心者を超えた寓意がほのめくところ、この句の味わい。

◎スケートによちよち歩きといふもあり    酢豚
【評】小鳥や幼児に用いられる「よちよち」というオノマトペによって、微笑みと涙の両方が交互に伝わる。「○○に○○がある」という型を熟知している。

△ドビュッシー流れ氷上の妖精よ      由美
【評】女性のフィギュアスケーターを称える句だろう。但し「氷上の妖精」と言ってしまうと、もう俳句にする必要はなくなってしまう。「ドビュッシー流れ○○○流れ」のような型を学ぼう。「氷上の妖精」を解体して細部を描写したい。

△スケート児刃光躍らせ凍池指す       泰
【評】手に持ったスケートを光らせて、子供がリンクを目指している景か。「刃光」はジンコウか、「凍池」はトウチか。このような言葉が身近にない不明を恥じる。但し現代の句は平明な言葉を用いたい。「光躍らせ」というにも誇張。俳句は大袈裟に仕立てないのがよい。

△スケーターの眸にキラリ舞ひ終へしとき  むらさき
【雹】踊り終えた感慨を詠んだのだろう。但しその説明に終わっている。「○○や」という型を覚えたい。

△スケートの舞の軌跡や笑み残る      靖子
【評】「スケートの舞の軌跡や」は美しい絵柄だが、「笑み残る」がわからない。下五を差し替えて勉強してみよう。

△スケートに八十路媼も憧れる      佳子
【評】できることなら私もやってみたいという気持ちか。始めた経験を詠めば俳句になるのだが。


○おほかたは社寺へ越したり嫁が君    月子
【評】「嫁が君」は正月三が日の鼠をめでたく言い取った言葉。社寺へ移動した理由は食べものが多いためか。それとも典拠あるか。やや難解。

○神棚のお神酒を蹴つて嫁が君     ひろし
【評】われら昭和世代には、正月にこのような景があった気にさせる句。中七を「お神酒蹴る音」として句切れを明らかにするのも一案。

○神棚の膳の味見や嫁が君       光江
【評】「○○の○○や○○」という型にはまってわかりやすい。俳句を楽しむ初期段階として、こういう型を覚えてゆくことは大事である。

○地下街の勝手知りたる嫁が君     直久
【評】地下街は食べものがいっぱいだから、たしかにこういうとらえ方もできる。

○新薬の開発に生く嫁が君       ムーミン
【評】鼠が実験にいかに寄与しているかを考えると、このようなとらえ方もあるだろう。但し正月のめでたさという本意からはそれてしまう。


○新妻の寝言気になる嫁が君      和子
【評】中七「気になる」で句切れがあるとみたが、作者の意図にかなっているかどうか自信はない。「新妻」を、猫の妻とみるか、人の妻とみるか、さて難解なり。

△尾をまるめ気づかふ猫や嫁が君     山茶花
【評】読者としては猫が何に(を)気遣うのかをはっきりと知りたい。鼠を気遣うのでは面白くないと思う。

△市に出す品を増やさん嫁が君     千年
【評】「嫁が君」がどのように働いているのか、その効果がつかめなかった。

△音無しや飢えあるころの嫁が君      憲
【評】「音無し」は「音無しの構え」の意か、難解。「嫁が君」の本意はめでたさなので、「飢えあるころ」というとらえ方はなじみにくい。

 
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