わくわく題詠鳩の会会報49   ホーム
鳩ノ会会報49
兼題 片陰・ヨット・空蝉
国に死罪を行なへば、海内に謀叛の者絶えず。
(平治物語・下)
【片陰】一方の日の当たらないところ。時間の推移で変化する。
◎片陰にプール帰りの子供かな 高橋  剛 日常を素直に描いた。
◎束の間を片陰に入りバスを待つ 金井  巧 日常を素直に描いた。
◎片陰を求めて並ぶ交差点 尾崎喜美子 日常を素直に描いた。
◎片陰に幼稚園バスのやって来る 堀 眞智子 日常を素直に描いた。
○片陰を過ぎて一人の影をふむ 小出 富子 自分の影でしょうね。
○片陰もなき刑務所の長き塀 堀口 希望 重すぎるけれど。
○片蔭を拾ひひろひて子の家へ 梅田ひろし 「ひろひひろひて」に賛否あろう。
○片蔭を出つ入りつして下京区 根本 文子 「下京区」に賛否あろう。
○縦にそひ片陰を行く老夫婦 松村  實 「縦になり」。
○片陰にひそひそばなし小半時 ひぐらし 凝縮度不足だが。
○片陰に入りてやさしい声となり 水野千寿子 凝縮度不足だが。
○片陰に入れば心のつながりぬ 安居 正浩 凝縮度不足だが。
○気が付けば君片蔭でしゃべりおり 高本 直子 凝縮度不足だが。
○片蔭やペットもバギーに乗りて行く つゆ草 凝縮度不足だが
○片蔭に鳴ってるラジオ甲子園 西野 由美 「甲子園」再考せよ。
○片陰をさがして移す三葉苗 天野喜代子 実感あり。
 片陰のビルの天辺乳母車 谷  美雪 片陰の場所不明瞭。
 電線の長き片陰無人駅 五十嵐信代 「電線」の意味が把握できない。
 片陰のしばらく途切れ草ぼうぼう 大江 月子 夏草の句になってしまう。
 片陰の宿出でて乗る駱駝かな 吉田いろは 駱駝の句になってしまう。
 片蔭に尻尾無し蜥蜴うずくまり  中村美智子 重すぎるね。
 片陰よ老いたる身には鍬重し 礒部 和子 重すぎるね。
 片陰に湿りの匂ひふと立ちて 清水さち子 素直なれど、弱し。
 片陰に入りてごろりすミミの寝屋 米田かずみ 凝縮度不足なり。
 片陰をつたひて野良は走り去る 尾崎 弘三 素直なれど、弱し。
 杖忘れ片陰戻る癒ゆ願い 櫻木 とみ 「癒ゆ願い」推敲したい。
 ミサ終はる大方陰へたばこ人 谷地元瑛子 「たばこ人」熟さぬ語。
 片陰狭き座つても足が日に 竹内 林書 韻律を整えよ。
【ヨット】yacht。小型の帆船。スポーツや遊覧に用いる。
◎定年やヨットは白き帆を下ろし 安居 正浩 余情豊かなり。
◎湘南の沖にヨットの総出かな 大江 月子 この素直な描写は手腕。
◎ヨット駆るアランドロンが好きだつた 吉田いろは 「ヨットの帆」と切るがよい。
○出番なきヨットの絵ハガキまたしまふ 清水さち子 下五「抽斗に」ではいかが。
○朝風や白波きってゆくヨット 松村  實 素直すぎるが。
○入航のヨットに灯台閃光す 櫻木 とみ 素直すぎるが。
○水面にヨット浮かべて当てはなく 高橋  剛 おかしみと哀しみとあり。
○傾けば魚影の上のヨットかな 礒部 和子 描写よし。抒情が不足。
○ヨットそのスペル覚えし日の恋し ひぐらし 「恋し」は重し。
○赤銅の鍛へし腕やヨット繰る 尾崎喜美子 まぶしき男を点出。
○大海のヨット木の葉のように舞ふ 小出 富子 ただし「木の葉」に冬の季あり。
○一湾にヨット遊ばせ月まどか 堀口 希望 絵はがきのごときは欠点。
○空港の沖ゆく白きヨットかな 堀 眞智子 絵はがきのごときは欠点。
 乗れるなら「デュフィ」のヨット夢に見る 根本 文子 凝縮度不足。
 浴室のブリキのヨット忘れられ 水野千寿子 「浴室に……残りをり」と収まりよく。
 大海の凪ぎて気怠きヨットの帆 梅田ひろし 「気怠き」は重し。
 ヨットいいな『ツバメ号とアマゾン号』 西野 由美 おもしろいが未熟。 
 わらわらとヨット押す砂舞い上がり 中村美智子 「わらわら」再考したい。
 湘南の海はヨットの初舞台 米田かずみ 「初舞台」で失敗。
 青い海青春夢のヨットかな 天野喜代子 対象をもう少し凝視したい。
 日落ちてハーバーに列並むヨットかな 五十嵐信代 「列並む」をもっと平易に。
 爽快に定年後の夢ヨット行く つゆ草 「夢かなふ」とせねば不十分。
 初ヨット風見を睨み操る帆 谷  美雪 「初ヨット」とは熟さぬ語。
 帆をはりて風と対話すヨットかな 尾崎 弘三 二箇所で切れぬようにしたい。
 歯の白きヨットウーマン恋もせで 金井  巧 「恋もせで」で失敗。
 沖のヨットいつの間に潮も満ち来る 谷地元瑛子 凝縮度不足。
 波の流にヨット起伏人の世も 竹内 林書 凝縮度不足。
【空蝉】虚蝉。蝉のヌケガラ。転じて現世や現世に生きている人をもいう。
◎新らしき空蝉のあり墓そうじ 天野喜代子 こういう描写が基本である。
◎ベランダの空蝉庭に移しけり 金井  巧 こういう描写が手本である。
◎空蝉や酒蔵掴む力あり 礒部 和子 「空蝉に」。力ある句。
◎空蝉や大慈大悲の尼寺に 水野千寿子 物語も見えておもしろし。
○空蝉の掃き寄せられし草に臥す 小出 富子 「草の中」。
○葉の先にまだ揺れてゐる蝉のから 吉田いろは 「まだ」を捨てたいね。
○空蝉をつつみて闇のやはらかし 梅田ひろし 「包める闇のやはらかく」。
○空蝉や足萎へし母の脚さする 尾崎喜美子 実情であろう。
○空蝉やそつと見守るしかできず つゆ草 心境句。
○塵取に止まる空蝉見つけたり 堀 眞智子 「見つけたり」を捨てたい。
○空蝉や丸めた手の中宝物 谷  美雪 文語を使えば姿が整うのだが。
 空蝉の身の透き通るほど哀し 米田かずみ 「身の」難解。
 子を生んでより空蝉はわが産屋 大江 月子 「わが産屋」難解。
 空蝉の声も抜け出てゆきにけり 根本 文子 「空蝉の声」難解。
 空蝉に命のやどる雨の粒 安居 正浩 「命のやどる」難解。
 杭さきをつかむ空蝉海の鳴る 西野 由美 「海の鳴る」が唐突だね。
 目覚めても空蝉心抱き締める 中村美智子 目覚めるは、抱きしめるは誰か。
 手のひらのあはき哀しみ蝉の殻 清水さち子 「あはき哀しみ」とは饒舌過ぎる。
 空蝉のしつかと摑む夕日中 松村  實 「夕日中」再考したい。
 空蝉や藻屑となりし兵の墓 堀口 希望 似合いすぎるのも欠点。
 うつせみに脱ぎ棄てられし昨日かな ひぐらし おもしろいが、初五難解。
 夕闇に化石となりぬ空蝉は 五十嵐信代 結び落ち着かず。
 雲湧きて空蝉のごと流れ去る 尾崎 弘三 中七の比喩に賛否あり。
 空蝉を集めし老婆部屋の鉢 櫻木 とみ 「集めし」の心底難解。
 蟋蟀の枕辺に鳴き主人留守 竹内 林書 季題違い。
 空蝉の数ほど時雨よあけ前 谷地元瑛子 句意不明瞭。
 空蝉の姿変われど我は知る 高橋  剛 句意不明瞭。
 蝉の殻集める稚児の手愛ほしく 高本 直子 すべてを言わなくてよい。
海紅切絵図
片陰に朝採りのものひろげゐし 海紅
加山雄三のヨットといふを見き
空蝉や前足の逞しきこと
 
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