わくわく題詠鳩の会会報72   ホーム
鳩ノ会会報72(平成28年3月末締切分)
兼題 大試験・陽炎


◎鉄柵に足蹴の跡や大試験    ひぐらし
【評】題詠のお手本としてよいだろう。姿情安定している。

◎大試験終へ日の新た風新た    啓子
【評】すべてが一新する心境如実。類句が少し心配。

◎あの頃はすべて青春大試験   酢豚
【評】「あの頃」と「大試験」の示す景色がぴたりと重なるために散文的、つまり説明に陥ってしまう。「あの頃」を捨て、助動詞を用いて〈すべて青春だった〉と過去形にして、「大試験」を眼前、現在の事柄と処理できれば、一句に時空の切れが生じて感慨深く、よみがえる事柄の強烈さを読者と共有できる気がする。うまく解説出来ていないかもしれないが、この作者以外の人々にとっても大切な工夫なので、駄弁を弄しておく。「華を踏んで十八の春なつかしき 東皐」

○玻璃ゆらすしづの女の声大試験    瑛子
【評】なぜ身分の卑しい女が登場するのか難解。その声が意味するところもむずかしい。よもや「竹下しづの女」を仕込んではいるまいな。重し、重し。

○大試験終へて茶断ちの茶の香り    直久
【評】いいね。但し「茶の香り」が暢気な印象を与える可能性あり。「大試験終へ茶袋を解きにけり」などとし、「茶断ち」という言葉を隠す方法もある。

○大試験終へし窓辺に星ひとつ    貴美
【評】姿は整った。抒情はいまひとつか。

△辿り着きし晩学の大試験    梨花
【評】音数不足か。「辿り着きし晩学」が重い。「晩学の大試験」が難解。

△幾たびや悲喜こもごもの大試験     靖子
【評】ことばも、心もありふれている。


○励ましは祖母のカツ弁大試験     和子
【評】「励ましの」と「の」で畳みかけたほうが焦点定まる。ただ抒情はありふれている。

○もう一度あるかもしれぬ大試験    千年
【評】大試験それ自体からそれてしまった。しかしいつまでも人生に立ち向かう気持ちは伝わる。

△大試験時計あはせつ馳す心    憲
【評】中七、下五が大試験のイメージに含まれてしまっている。それでありふれてしまった。

○大試験赤座布団よいざさらば    美雪
【評】赤座布団とは赤点や落第点などテストの点数が低いことを意味する。これはテストの結果が平均点の半分以下だった際、点数の下に赤い線が引かれたためで、この赤い線を座布団に例えて赤座布団と呼ぶようになった(エリアによっては赤座布と略すところもある)。

◎かげろふや改修成りし段葛    希望
【評】平明にして非凡。イイナア。


◎陽炎やひとり体育見学す    由美
【評】これもいいね。余計な説明はいらないね。字余りでも「体育を」としようか。

◎陽炎やふと口ずさむ智恵子抄    むらさき
【評】「ふと口ずさむ」がいい。「智恵子抄」は他のものと入れ替わるけれど、その似合うものに「智恵子抄」もあるのだから気にしなくてよい。

○下校生飛ばす自転車かぎろひぬ    ひろし
【評】安定した景情。欲をいえば、新しみの追求か。

○陽炎のごとくに齢かさねゐる    山茶花
【評】主題は明快。「ごとくに」が説明的に感じられたら、「陽炎や」と打ち出して上下を切り、「齢○○になりました」と自称の句にする手もある。


△陽炎で色のひろがる紅白梅        佳子
【評】「陽炎」「紅白梅」で季重なり。陽炎に包まれるものはすべて情があるから、紅白梅を捨てて再考かな。

△陽炎と遊ぶ園児らはしつこく    ムーミン
【評】よくわかるけれど、はしこい園児は普通のこと。普通じゃないものがみえるまで待って、それを描きたい。

○かげろふや三輪車こぐ子の少な    月子
【評】俳句は十七音しかないので、このごろ三輪車をみないということだけの方が余情が出ると思う。

 
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