わくわく題詠鳩の会会報53   ホーム
鳩ノ会会報53(平成25年1月末締切分)
兼題 左義長・寒稽古


【△】ヤマ焼くぞ暁煙るさぎつちよん      市川千年
■海紅評=左義長を「さぎつちよん」と発音する土地があるのだろうか。その火勢を心配する気持ちが「ヤマ焼くぞ」となる。ただし、視点が火勢に取られて、年中の病を除くなどの左義長の本意がうすれてしまう難点がある。


【△】そぞろ雨天左義長を誘ひしむ         月子
■海紅評=思いがけない雨が降って、左義長にふさわしい空模様になった。句意はこんなところか。あるいは、雨が左義長を急がせていると詠むか。いずれにしろ座五「誘はしむ」だろう。


【△】左義長を組む父見上げ誇らしげ      ムーミン
■海紅評=「誇らしげ」はいらない。誇らしげな姿を描写したい。


【△】白鳥の歌碑こえ飛ぶやどんどの火    谷地元瑛子
■海紅評=「白鳥の歌碑」の説明がなければ、読者に届かない。


【△】募金箱も熱く照らさるどんど焼き     西野由美
■海紅評=「熱く照らさる」という思い入れを捨てたい。募金と左義長は別のテーマだから、左義長の場に募金箱も置かれているとだけ言えばよい。


【△】左義長やけむりはげしき人の声      青柳光江
■海紅評=「左義長の煙はげしや」と「や」の置き場所を変えれば完成度が増す。


【○】古稀すぎの手習帖を神の火に       礒部和子
■海紅評=吉書揚などの伝統が思いおこされて情あり。「神の火」はあいまいゆえ「手習帖も左義長に」「手習帖もどんど焼」などではいかが。


【△】左義長や天までとどけ地の恵み     天野喜代子
■海紅評=左義長は神仏への供物ではない。無病息災や上達を期待するという本意をそれてはいけない。

【○】左義長の天を揺るがす火勢かな      梅田ひろし
■海紅評=佳句。ただし「天を揺るがす」はありがちな表現。この作者には「火勢」の細部をつかまえる力量があると期待する。

【○】寒稽古道衣の女児の瞳にひかり      柴田 憲
■海紅評=佳句。ただし「瞳のひかり」と最後まで「の」でたたみ込んだ方が美しい。

【○】子の親が窓より覗く寒稽古        安居正浩
■海紅評=佳句なれどありがちな景色。「その親」として「子」を言外に匂わせる道もある。

【△】寒稽古見証の声も凛りんと         こま女
■海紅評=寒稽古は凛々としたものだから「凛りんと」はいらない。「見証の声の太々と」などではいかが。

【○】川に入るべそかきつ子の寒稽古      小出富子
■海紅評=大勢の中の一人なのだから「べそかきつ子も」とする方が奧行きあり。

【○】寒稽古一門空手風を切る         菅原通斉
■海紅評=佳句なれどありがちな景色。カラテと読んでも、クウシユと読んでもおもしろい。

【△】正眼の構えも老いたり寒稽古       三嶋 泰
■海紅評=痛々しき句なり。老いの中に残る美を発見されたし。

【○】寒稽古剣士の太き眉根かな        ひぐらし
■海紅評=佳句なれどありがちな景色。「かな」は古風に響くので、「太き眉根や寒稽古」と季題を座五に置く手もある。

【○】裂ぱくの気合を発し寒稽古       梅田ひろし
■海紅評=「裂ぱくの気合」は寒稽古そのものゆえ平凡に響く。細部の観察ができれば更なる余情を生むだろう。


 
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