わくわく題詠鳩の会会報64   ホーム
鳩ノ会会報64(平成26年11月末締切分)
兼題 帰り花・毛糸編む


◎息抜きのごとき日溜り帰り花    千年
【評】「日溜まり」を「息抜きのごとき」と発見した段階ですでに詩である。

○廃坑の町に人見ず返り花      ひろし
【評】廃坑の町に人が見当たらないのは当然のことと受け取られる点に難あり。

○悲しめば帰り花咲く佳き日かな    むらさき
【評】悲しみの「帰り花」とは相関関係にないのだが、あるように思えることが人生にはある。「咲く」は不要だが、情が表現できれば、語法の修練は急がなくてよいだろう。

○老いのなほ恃むことあり返り花   憲
【評】老いの恃みと「返り花」は近すぎる点に難あり。

△口閉ざし反抗した日や帰り花    ムーミン
【評】「口閉ざし」と「反抗」はどちらか一方でよくはないか。

△帰り花噂を聞いて携帯を      和子
【評】ボクには「帰り花」と中七以下が結びつかなかった。「噂を聞いて携帯を」も情況把握むずかしい。

◎毛糸編む少し遠くへ行く電車    月子
【評】初句切れが効果的。「毛糸編む」絵柄と「少し遠くへ行く」女がよく似合う。


◎毛糸編む母のまんまる眼鏡かな   酢豚
【評】編み物の説明をせず、母の眼鏡をあしらうところ秀逸。俳句を始めて間もない人のよき手本。

◎声出して数ふる目数毛糸編む      靖子
【評】「声出して」でとてもリアルになった。

○みすずの詩ラジオ聴きつつ毛糸編む ちちろ
【評】「みすずの詩」と「ラジオ」が一体の物であり、別物でないことを明確にするために、「みすずの詩流るるラジオ毛糸編む」としてみました。参考にしてください。

○子の肩に当てて確かむ毛糸編み   直久
【評】「子」に着せるセーターが事実としても、この「子」を削るほうがよい。全部を述べようとしないこと、省略して、不足は読者に任せること。なお下五「毛糸編む」と終止形にするほうが形式上も余韻の上からもよい。すなわち「また肩に当てて確かめ毛糸編む」という語法の安定感を学んでほしい。

○胎動にときどきあてて毛糸編む   文子
【評】やがて母になる女性の姿がありありと見えるが、それだけに「胎動」を詩語として消化するのは容易ではない。


○御朱印の墨の香りや帰り花     ひぐらし
【評】歴史上の公文書見学などで、いまだに墨の匂いが感じられるということは確かにある。「帰り花」は実際に咲いている植物と見る。比喩としては安っぽくなるので。

○忘れ花この家売ると父言ひき    由美
【評】「この家売ると父言ひき」という重たさを大切にしたいと思うが、「忘れ花」が似合うかどうかについては迷う。

△毛糸編む残り毛糸の縞三段     美雪
【評】「縞三段」は美しそうに思うが、「残り毛糸」がボクにはわからなかった。

△諍いを秘めて一心毛糸編む     山茶花
【評】「諍いを秘めて」がドラマチック過ぎて、読者が逃げてしまいそう。

 
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