わくわく題詠鳩の会会報 43   ホーム
鳩ノ会会報43
兼題 巴里祭・凌霄花・昼寝
絵に書き劣りするもの、…物語にめでたしといひたる男、女のかたち
(枕草子・116段)
【巴里祭】一七八九年七月十四日、パリ市民バスチーユ牢獄を占拠。
◎巴里祭や錆の浮き出し洋食器 金井  巧 景情整ひたる。
○パリー祭真白く高きシェフの帽 梅田ひろし 「高き」がよい。
○持ち唄は演歌一曲パリー祭 堀口 希望 シャンソンも演歌なれば。
○大川を水上バスの灯巴里祭 松村  實 「大川の」
○政局の行方は知らずパリ祭 天野 さら 「知らず」では物足りなき感。
○乳ふくませパリ祭といふ革命思ふ 西野 由美 「といふ」不要。
○巴里祭に託つ到来ワインかな 柴田  憲 「かな」に別案がほしい。
○つば広き帽子ななめにパリー祭 青柳 光江 懐かしき昭和を思う。
○角帽の酔ひ潰れをり巴里祭 ひぐらし 懐かしき昭和を思う。
○引き出しの奥のリモージュ巴里祭 根本 文子 リモージュは焼き物か。
○パリー祭ドアに鈴鳴る喫茶店 大江 月子 さりげなさよき。
○シャンソンを聞くたび想ふ巴里祭 天野喜代子 素直でよろし。
 思ふ人打ち明け合いし巴里祭 水野千寿子 目に見ゆる景が欲しい。
 オムレツに血の色のせて巴里祭 安居 正浩 「血の色のせて」恐ろし。
 星一つそつとみつめるパリ祭 小出 富子 叙景の効果弱し。
 スカートの裾舞い上がり巴里祭 つゆ草 叙景の効果弱し。
 巴里祭やマリー・アントワネットの貸衣装 谷  美雪 こんな貸衣装もあるか。
 巴里祭ささやく歌も空の下 吉田いろは 叙景の効果弱し。
 モガ・モボと父母も言はれし巴里祭 礒部 和子 「父母も言はれし」不要。
 パリ祭や今日あることの有難き 尾崎喜美子 「有難く」か「有難し」か。
 畑仕事今日パリ祭と腰ラジオ 尾崎 弘三 「腰にラジオ」としたい。
 巴里祭を見たくてビデオ借りに行き 中村美智子 「借りに行く」
 パリ祭とかはり世界史遥かなり 清水さち子 「とかはり」「遥か」難解。
 巴里祭マリーという名の子犬かな 五十嵐信代 「マリー」だけではやや無理。
 雨降るも踊りや歌や巴里祭 竹内 林書 「雨の中の」
 幻惑のパリ祭病窓夕日燃ゆ 櫻木 とみ 「病窓」で主題が割れて惜し。
 巴里祭といへどかそけき思ひかな 市川 千年 目に見ゆる景が欲しい。
 巴里祭に今年も来てねと六十路歌手 椎名美知子 目に見ゆる景が欲しい。
【凌霄花】塵とりに凌霄の花と塵すこし   素十
◎凌霄花潮のにほひの髪に挿す 青柳 光江 景情整いたる。
◎凌霄の花まで送り別れけり 吉田いろは 省略が利いて可。
◎民宿の茶色い畳のうぜん花 五十嵐信代 「凌霄花」と漢字に。
◎凌霄花先輩の恋正念場 西野 由美 「先輩」とは面白い。
◎凌霄花真砂女の恋句肯はず 堀口 希望 「恋句」あるいは「恋を」。
○芭蕉句碑木曾路を灯す凌霄花 根本 文子 「芭蕉句碑」とまで言えば重し。
○凌霄の天より陣を張るごとし 市川 千年 新しい感慨。
○凌霄花庭で遊ぶ子元気良し 堀 眞智子 素直でよろし。
○凌霄や湖かぜ抜くるレストラン 松村  實 凌霄が涼しく見ゆる。
 凌霄花生家の庭にアーチ成す 天野 さら 「成す」よりも「迎へる」か。
 去りゆく背のうぜんかずらに語り継ぐ 櫻木 とみ 「去りゆく背」未消化。
 自著渡す含羞の人ノウゼン咲く 水野千寿子 「凌霄花」
 お屋敷に堂々として凌霄花 つゆ草 「堂々として」不要。
 蝋纈の染め見事なり凌霄花 谷  美雪 「凌霄を染めて蝋纈見事なる」
 凌霄の生にむせたり密かごと 大江 月子 「生に」不要。
 凌霄花剪定にはおしい花暖簾 礒部 和子 「剪定に惜しき凌霄…」
 太陽と色競ひをり凌霄花 尾崎喜美子 「太陽の」
 日暮れすぎのうぜんかづらの花の色 尾崎 弘三 「凌霄の日暮るる頃の色が好き」
 凌霄花にあり咲く美学散る美学 安居 正浩 凌霄に限るまい。
 散り際のいさぎよしさや凌霄花 小出 富子 凌霄に限るまい。
 太陽に抗ひつづけ凌霄花 梅田ひろし 中七重し。
 凌霄の花日食に影消ゆる 金井  巧 主題とらえがたし。
 逝きし人はやめぐり来て凌霄花 清水さち子 死者が巡り来る誤解が生ず。
 主去りてのうぜんの花守る家 椎名美知子 花を守るか、花が守るか。
 他の木にからみ妖艶売り 竹内 林書 妖艶と見る趣向は面白い。
 青空を突き射し映ゆる凌霄花 天野喜代子 叙景の効果弱し。「射て」
 凌霄花アーチの下の揺れる闇 中村美智子 叙景の効果弱し。
 校庭に咲き零るるやのうぜん花 ひぐらし 叙景の効果弱し。
 凌霄の花の命や朱のあふれ 柴田  憲 叙景の効果弱し。
【昼寝】 手枕に黒髪あふれ昼寝海女  上田土世起
◎昼寝とは可愛いい言葉保育園 櫻木 とみ ありそうでなかった新鮮さ。
○昼寝覚め夢のつづきの宿場町 根本 文子 羨ましき旅寝かな。
○父知らぬ子も定年の昼寝かな 水野千寿子 早く父を失いし人の半生。
○昼寝して明日あることを忘れたり 安居 正浩 思い当たる節あり。
○昼寝して初めから読むストーリー 大江 月子 読み直すということならん。
○はらがけの小さく並ぶ昼寝かな 吉田いろは 保育園などが彷彿と。
○竣工の間近き木の香三尺寝 堀口 希望 大工さんなどと思われる。
○大昼寝覚めて解けたる詰将棋 金井  巧 思い当たる景なり。
○風のふと顔をよこぎる昼寝覚め 清水さち子 思い当たることあり。
○まどろみて母の手たぐる昼寝かな 尾崎喜美子 小さき子が彷彿と。
○御香など焚きて少しの昼寝かな つゆ草 「香」と「少し」が似合う。
 浜風に乗る波の音昼寝歌 尾崎 弘三 「浜風に乗る」不要。
 旅帰り昼寝に旅の続き見る 礒部 和子 「旅帰り」再考か。
 日曜静、猫と仲く昼寝かな 竹内 林書 「日曜静か猫と仲良く昼寝して」
 静かさを呉れたり孫の昼寝かな 堀 眞智子 「くれたる」
 三尺寝遠くに聞こゆ宅急便 青柳 光江 「遠く聞ゆる」
 呼び鈴の夢騒がしく昼寝中 中村美智子 思い当たる景なれど弱し。
 昼寝覚ただぼんやりと大胡坐 柴田  憲 思い当たる景なれど弱し。
 不眠症昼寝すがしき高令者 天野喜代子 思い当たる景なれど弱し。
 昼寝する少年ヒーローに変身中 五十嵐信代 思い当たる景なれど弱し。
 絵葉書を記す甲板昼寝覚め 松村  實 思い当たる景なれど弱し。
 昼寝して主婦の座しばし放棄かな 天野 さら 思い当たる景なれど弱し。
 関取の鼾轟く大昼寝 ひぐらし 思い当たる景なれど弱し。
 昼寝覚タイムスリップ子らの声 椎名美知子 素直なれど弱し。
 ふるさとの四方山話昼寝かな 小出 富子 帰省と見たが…。
 物草と言ひたきは言へ大昼寝 梅田ひろし やや古風なり。
 大揺れの大波小波昼寝かな 谷  美雪 場を明らかにしたい。
 子は午睡とんぼは池で産卵す 西野 由美 取合せの効果弱し。
 昼寝して太宰の街の職安へ 市川 千年 主題分離せり。
海紅切絵図
祐三も嗣治も若し巴里祭 海 紅
一途なること凌霄花を掃かぬこと 
食卓の急須の横に母昼寝
 
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