わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 行く春・桜 ◆

行く春(ゆく春)
芭蕉句 行春にわかの浦にて追付きたり(笈の小文)
行くはるや鳥啼きうをの目は泪(鳥のみち)
行春を近江の人とおしみける(猿蓑)
〔本意・形状〕 今まさに終わろうとする春を擬人化して、人を惜しむように惜しむ心を言う。季語の中で、行く春、行く秋、はあるが、行く夏、行く冬、はないことを見ても、春はことにも去り行く季節に哀感を籠めて和歌にも多く詠われてきた。「暮れてゆく春の湊は知らねども霞におつる宇治の柴ふね」寂蓮(『新古今集』)。
〔季題の歴史〕 『拾遺集』春に「花もみな散りぬる宿は行く春のふるさととこそなりぬべらなれ」貫之。『増山の井』(寛文七)、などに三月として所出。
〔類題 傍題〕 春の名残 春のかたみ 春の行方 春の別れ 春の限り 春の果て 春の湊 春の泊 春行く 春尽く 春を送る。
〔例   句〕 春のゆく音や夜すがら雨の足    太祇
ゆく春やおもたき琵琶の抱きごころ 蕪村
行く春やほうほうとして蓬原    子規
春尽きて山みな甲斐に走りけり   普羅
ゆく春や身に倖せの割烹着     鈴木真砂女
桜(さくら)
芭蕉句 命二つの中に生たる桜哉(ひとつ松)
さまざまの事おもひ出す桜かな(笈日記)
木のもとに汁も鱠も桜かな(ひさご)
〔本意・形状〕 桜は花の王とも言われ、花と言えば桜のことであり、日本の国花とされる。日本には特に桜の種類が多く、「山桜」等の野生種のほか、明治以降に作られた「ソメイヨシノ」等々、その数は数百種にも及び、古くから「吉野」を始めとする桜の名所が人々に愛されてきた。
〔季題の歴史〕 「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」業平(『古今集』)。「見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける」素性法師(『古今集』)など、勅撰集にも多く詠まれてきた。また、桜は稲作とも深くかかわり、「稲の精霊の依り代」とされ、東北地方には「種蒔き桜」も各地に見られる。
〔類題 傍題〕 若櫻 老桜 朝桜 夕桜 千本桜 嶺桜 庭桜 家桜 一重桜 御所桜 姥桜 江戸桜 深山桜 里桜 丁子桜 豆桜 富士桜 金剛桜 桜山 桜の園 大島桜 大山桜 桜月夜。
〔例   句〕 夕桜家ある人はとくかへる      一茶
朝桜揺らぎ天竜ながれたり      水原秋櫻子
じつによく泣く赤ん坊さくら五分   金子兜太
押し合うて海を桜のこゑわたる    川崎展宏
さきみちてさくらあをざめゐたるかな 野沢節子
(根本梨花)


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