わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 千鳥・帰り花 ◆

千鳥(ちどり)
芭蕉句 冬牡丹千鳥よ雪のほととぎす(ひとつ松)
星崎のやみを見よとや鳴千鳥(あら野)
千鳥立更行(ふけゆく)初夜の日枝(ひえ)おろし(伊賀産湯)
〔本意・形状〕 千鳥の足は指が三本で、これが電光型の足跡になる。嘴は短く少し膨らんでいる。飛ぶ力は強く、大群で旋回飛行する。声が可憐で愛らしく、古くからその鳴き声が詩歌に詠まれてきた。多くは渡り鳥で日本では10種余りが見られる。足を左右に踏み違えて歩くので、千鳥足という。
〔季題の歴史〕 『万葉集』に「淡海(あふみ)の海夕波千鳥汝が鳴けばこころもしのにいにしへ思ほゆ 柿本人麻呂」。『金葉集』に「淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守 源兼昌」。など名歌が多く残されている。
〔類題 傍題〕 衛(ちどり) 磯千鳥 小千鳥 白千鳥 浜千鳥 島千鳥 浦千鳥 群千鳥 友千鳥 夕千鳥 小夜千鳥 川千鳥
〔例   句〕 浦風や巴をくづすむら衛      曾良
あら磯やはしり馴たる友衛     去来
上汐の千住を超ゆる千鳥かな    正岡子規
ありあけの月をこぼるゝ千鳥かな  飯田蛇笏
群千鳥渚に下りてより見えず    阿部みどり女
帰り花(かえりばな)
芭蕉句 波の花と雪もや水にかえり花(如意宝珠)
凩に匂やつけし帰花(かへり花)(後の旅)
〔本意・形状〕 十一月ごろにあたたかい小春日和が続くと、思いがけない草木が花を咲かせることがある。これを帰り花、返り咲きと言う。特に桜、梅、桃、山吹、つつじなどに見られる。「和歌、連歌には詠題としてはないが、俳諧に到って盛んに作られ出した。元禄、天明の俳人たちは、とりわけこの現象に興趣をもやしたようだ。」(『山本健吉基本季語500選』)
〔季題の歴史〕 『初学抄』『毛吹草』『滑稽雑談』以下、十月、十一月として、取り上げている。「像に声あれくち葉の中に帰り花 素堂」、「蓑虫のいつから見るや帰り花 昌碧」。
〔類題 傍題〕 返り花 帰り咲 二度咲 忘れ咲 忘れ花 狂い咲 狂い花
〔例   句〕 さかりをや俤にしてかへりばな     風虎
かへり花暁の月にちりつくす      蕪村
梨棚や潰えむとして返り花       水原秋櫻子
真青な葉も二三枚返り花        高野素十
返り花咲けば小さな山のこゑ      飯田龍太
(根本梨花)


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