千鳥(ちどり) |
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芭蕉句 | 冬牡丹千鳥よ雪のほととぎす(ひとつ松) 星崎のやみを見よとや鳴千鳥(あら野) 千鳥立更行(ふけゆく)初夜の日枝(ひえ)おろし(伊賀産湯) |
〔本意・形状〕 | 千鳥の足は指が三本で、これが電光型の足跡になる。嘴は短く少し膨らんでいる。飛ぶ力は強く、大群で旋回飛行する。声が可憐で愛らしく、古くからその鳴き声が詩歌に詠まれてきた。多くは渡り鳥で日本では10種余りが見られる。足を左右に踏み違えて歩くので、千鳥足という。 |
〔季題の歴史〕 | 『万葉集』に「淡海(あふみ)の海夕波千鳥汝が鳴けばこころもしのにいにしへ思ほゆ 柿本人麻呂」。『金葉集』に「淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守 源兼昌」。など名歌が多く残されている。 |
〔類題 傍題〕 | 衛(ちどり) 磯千鳥 小千鳥 白千鳥 浜千鳥 島千鳥 浦千鳥 群千鳥 友千鳥 夕千鳥 小夜千鳥 川千鳥 |
〔例 句〕 | 浦風や巴をくづすむら衛 曾良 あら磯やはしり馴たる友衛 去来 上汐の千住を超ゆる千鳥かな 正岡子規 ありあけの月をこぼるゝ千鳥かな 飯田蛇笏 群千鳥渚に下りてより見えず 阿部みどり女 |
帰り花(かえりばな) | |
芭蕉句 | 波の花と雪もや水にかえり花(如意宝珠) 凩に匂やつけし帰花(かへり花)(後の旅) |
〔本意・形状〕 | 十一月ごろにあたたかい小春日和が続くと、思いがけない草木が花を咲かせることがある。これを帰り花、返り咲きと言う。特に桜、梅、桃、山吹、つつじなどに見られる。「和歌、連歌には詠題としてはないが、俳諧に到って盛んに作られ出した。元禄、天明の俳人たちは、とりわけこの現象に興趣をもやしたようだ。」(『山本健吉基本季語500選』) |
〔季題の歴史〕 | 『初学抄』『毛吹草』『滑稽雑談』以下、十月、十一月として、取り上げている。「像に声あれくち葉の中に帰り花 素堂」、「蓑虫のいつから見るや帰り花 昌碧」。 |
〔類題 傍題〕 | 返り花 帰り咲 二度咲 忘れ咲 忘れ花 狂い咲 狂い花 |
〔例 句〕 | さかりをや俤にしてかへりばな 風虎 かへり花暁の月にちりつくす 蕪村 梨棚や潰えむとして返り花 水原秋櫻子 真青な葉も二三枚返り花 高野素十 返り花咲けば小さな山のこゑ 飯田龍太 |
(根本梨花) |