蛍(ほたる) |
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芭蕉句 | 愚にくらく棘(いばら)をつかむ蛍哉(東日記) この蛍田ごとの月にくらべみん(みつのかほ) めに残るよしのをせたの蛍哉(真蹟懐紙写し) 草の葉を落つるより飛蛍哉(いつをむかし) 己が火を木々の蛍や花の宿(をのが光) |
〔本意・形状〕 | 日本にいる蛍は10種類ほどと言われるがよく知られているのは源氏蛍、平家蛍である。夏の夕暮れから水辺に光り、飛び交わして独特の趣がある。蛍合戦は多くの蛍が一団となって高く上り交尾をする。 |
〔季題の歴史〕 | 明滅する光は恋の思いを託し、あるいは魂になぞらえて詩歌に詠まれてきた。〈音もせで思いに燃ゆる蛍こそ鳴く虫よりもあはれなりけり 源重之〉・〈もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る和泉式部〉 |
〔類題 傍題〕 | 大蛍・初蛍・蛍火・朝の蛍・夕蛍・雨の蛍・草蛍・蛍合戦 |
〔例 句〕 | 草の戸に我は蓼食ふほたるかな 其角 さびしさや一尺消えてゆく蛍 北枝 人寝て蛍飛ぶなり蚊帳の中 正岡子規 蛍火の明滅滅の深かりき 細見綾子 ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜 桂 信子 |
瓜(うり) | |
芭蕉句 | 瓜作る君があれなと夕涼み(あつめ句) 山陰や身を養はん瓜畑(いつを昔) 子ども等よ昼顔咲きぬ瓜むかん(藤の実) 朝露によごれて涼し瓜の土(こがらし) 花と実と一度に瓜のさかりかな(こがらし) |
〔本意・形状〕 | 瓜と言えば甜瓜(まくわうり)、胡瓜、冬瓜、西瓜、糸瓜などの総称であるが昔は主として甜瓜をさしていた。井戸などに釣るして冷やして夏の心地よい食べ物である。 |
〔季題の歴史〕 | 『万葉集』山上憶良〈瓜食めば子等思ほゆ。栗食めばまして偲ばゆ〉があるので奈良時代から知られていた。 |
〔類題 傍題〕 | 初瓜・瓜畑 |
〔例 句〕 | 水桶にうなづきあふや瓜茄子 蕪村 遠きより友こそ来けれ瓜むかん 召波 先生が瓜盗人でおはせしか 虚子 瓜貰ふ太陽の熱さめざるを 山口誓子 瓜の蔓宙に途方に暮れてゐし 中村苑子 |
(根本梨花) |