わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 五月雨・あやめ ◆

五月雨(さみだれ)
芭蕉句 さみだれに鳰のうき巣を見にゆかむ(真蹟懐紙)
さみだれの空吹きおとせ大井川(ありそ海)
五月雨のふり残してや光堂(鳥のみち)
五月雨を集て涼し最上川(伊達衣)
日の道や葵傾くさ月あめ(猿蓑)
〔本意・形状〕 梅雨と同じで、陰暦五月ごろの長雨を言う。梅雨は時候を主として言い、五月雨は雨そのものを言う。「さ」は神にささげる稲であり「みだれ」は「水垂れ」ともいわれる。
〔季題の歴史〕 古くから歌に詠まれ、「寛平御時の后宮の歌合の歌 五月雨にもの思ひおれば時鳥ふかく鳴きていづち行くらむ 紀友則」(「古今集」)等。時鳥と取り合わせて多く詠われるが、江戸時代以降俳諧もにも多く詠まれる。
「五月雨や天下一枚うち曇り 宗因」 「空も地もひとつになりぬ五月雨 杉風」 「湖の水まさりけり五月雨 去来」。
〔類題 傍題〕 五月雨(さつきあめ) さみだるる 五月雨雲 五月雨傘
〔例   句〕 五月雨に胡桃かたまる山路かな     園女
さみだれのかくて暮れ行く月日かな   蕪村
五月雨や船路に近き遊女町       几菫
五月雨や上野の山も見あきたり     子規
藻のごとく眠り夢にもさみだるる    鍵和田秞子
あやめ
芭蕉句 あやめ生(おひけ)り軒の鰯のされかうべ(俳諧江戸広小路)
あやめ草足にむすばん草鞋の緒(鳥のみち)
ほとゝぎす啼くや五尺の菖蒲(あやめ)草(葛の松原)
花あやめ一夜にかれし求馬(もとめ)哉(芭蕉句集草稿)  
〔本意・形状〕 あやめの語源は「文目」とされる。花は燕子花、花菖蒲ともよく似ているが、「あやめ」は垂れ下がった紫色の花びらの根元の部分に黄色い虎班があり、その上に紫色の鮮やかな編み目が出る。白あやめもある。
〔季題の歴史〕 「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」よみ人知らず(『古今集』第十一恋)は、菖蒲を詠んだ歌(基本季語五00選)だが、この歌を本歌としてさまざまに詠まれた。
〔類題 傍題〕 花あやめ 白あやめ ちゃぼあやめ
〔例   句〕 なつかしきあやめの水の行方かな     虚子
旅人に雨の黄あやめ毛越寺        素十
野あやめの離れては濃く群れて淡し   秋櫻子
あやめ咲くことを思へり厨房に      鷹女
暮れてより白きあやめの盛りかな     時彦
(根本梨花)


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