五月雨(さみだれ) |
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芭蕉句 | さみだれに鳰のうき巣を見にゆかむ(真蹟懐紙) さみだれの空吹きおとせ大井川(ありそ海) 五月雨のふり残してや光堂(鳥のみち) 五月雨を集て涼し最上川(伊達衣) 日の道や葵傾くさ月あめ(猿蓑) |
〔本意・形状〕 | 梅雨と同じで、陰暦五月ごろの長雨を言う。梅雨は時候を主として言い、五月雨は雨そのものを言う。「さ」は神にささげる稲であり「みだれ」は「水垂れ」ともいわれる。 |
〔季題の歴史〕 | 古くから歌に詠まれ、「寛平御時の后宮の歌合の歌 五月雨にもの思ひおれば時鳥ふかく鳴きていづち行くらむ 紀友則」(「古今集」)等。時鳥と取り合わせて多く詠われるが、江戸時代以降俳諧もにも多く詠まれる。 「五月雨や天下一枚うち曇り 宗因」 「空も地もひとつになりぬ五月雨 杉風」 「湖の水まさりけり五月雨 去来」。 |
〔類題 傍題〕 | 五月雨(さつきあめ) さみだるる 五月雨雲 五月雨傘 |
〔例 句〕 | 五月雨に胡桃かたまる山路かな 園女 さみだれのかくて暮れ行く月日かな 蕪村 五月雨や船路に近き遊女町 几菫 五月雨や上野の山も見あきたり 子規 藻のごとく眠り夢にもさみだるる 鍵和田秞子 |
あやめ | |
芭蕉句 | あやめ生(おひけ)り軒の鰯のされかうべ(俳諧江戸広小路) あやめ草足にむすばん草鞋の緒(鳥のみち) ほとゝぎす啼くや五尺の菖蒲(あやめ)草(葛の松原) 花あやめ一夜にかれし求馬(もとめ)哉(芭蕉句集草稿) |
〔本意・形状〕 | あやめの語源は「文目」とされる。花は燕子花、花菖蒲ともよく似ているが、「あやめ」は垂れ下がった紫色の花びらの根元の部分に黄色い虎班があり、その上に紫色の鮮やかな編み目が出る。白あやめもある。 |
〔季題の歴史〕 | 「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」よみ人知らず(『古今集』第十一恋)は、菖蒲を詠んだ歌(基本季語五00選)だが、この歌を本歌としてさまざまに詠まれた。 |
〔類題 傍題〕 | 花あやめ 白あやめ ちゃぼあやめ |
〔例 句〕 | なつかしきあやめの水の行方かな 虚子 旅人に雨の黄あやめ毛越寺 素十 野あやめの離れては濃く群れて淡し 秋櫻子 あやめ咲くことを思へり厨房に 鷹女 暮れてより白きあやめの盛りかな 時彦 |
(根本梨花) |