わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 陽炎・白魚 ◆

陽炎(かげろう・かげろふ)
芭蕉句 丈六に陽炎高し石の上(笈の小文)
枯芝ややゝ陽炎の一二寸(笈の小文)
かげろふの我肩にたつ紙衣(かみこ)哉(伊達衣)
かげろふや柴胡(さいこ)の糸の薄曇(猿蓑)
〔本意・形状〕 光と影とが微妙なたゆたいを見せる現象。特に、春の晴れた日に野原などで見られる現象をさすことが多い。麗らかな春の感じの季語である。
〔季題の歴史〕 平安時代以降の和歌では、あるかなきかに見えるもの、とりとめのないもの、見えていても実体のないもののたとえとされることが多い。
柿本人麻呂の「東の野にかぎろひの立つ見えて返り見すれば月かたぶきぬ」以来、詩歌の歴史の中に多く題材として用いられた。古く「かぎろひ」と言い「陽炎燃ゆる」「陽炎へる」「陽炎ひて」「陽炎立つ」「陽炎揺るる」と使い、言いかえも多い。
〔類題 傍題〕 糸遊(いとゆう)・遊糸(ゆうし)・野馬(やば・かげろう)・かぎろい
〔例   句〕 野馬(かげろふ)に子共あそばす狐哉   凡兆
陽炎や筏木かはく岸の上         太祇
ちらちらと陽炎立ちぬ猫の塚     夏目漱石
原爆地子がかげろふに消えゆけり   石原八束
妻亡しのむなしさもまたかぎろへる  森 澄雄
白魚(しらうお・しらうを)
芭蕉句 鮎の子の白魚送る別れかな(続猿蓑)
白魚や黒き目を明ク法の網(韻塞)
藻にすだく白魚や取らば消えぬべき(東日記)
あけぼのやしら魚白き事一寸(真蹟短冊)
〔本意・形状〕 長さ6~7センチ、やせ形の半透明で、腸も透いて見え、黒点を措いたように目が鮮やかである。姿が美しく、煮ると味は淡白で上品である。
〔季題の歴史〕 和歌、連歌時代はあまり注目されず、江戸の俳諧時代になって注目されだした。黙阿弥(もくあみ)の「三人吉三(さんにんきちざ)」の大川端の場で「月もおぼろに白魚の、篝もかすむ春の宵」など、よく知られたセリフもある。
〔類題 傍題〕 しらお・白魚捕・白魚汲む・白魚舟・白魚火・白魚汁
〔例   句〕 白魚やさながら動く水の色        来山
白魚をふるひ寄せたる四ツ手かな     其角
町空のくらき氷雨や白魚売り     芝不器男
思ひだけ白魚に柚子したたらす    細見綾子
白魚汲みたくさんの眼を汲みにけり  後藤比奈夫
(根本梨花)


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