わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 小春・枯野 ◆

小春(こはる)
芭蕉句 月の鏡小春にみるや目正月
〔本意・形状〕 冬になっても急に寒くなるわけではなく、しばらくの間まるで春のような暖かい日が続くことがある。これが、小春、小春日和、である。陰暦十月の異称でもある。
〔季題の歴史〕 『徒然草』一五五に「十月は小春の天気、草も青くなり、梅もつぼみぬ」とある。『荊礎歳時記』には、「十月ハ、天気和暖ニシテ、春ニ似ル。故ニ小春(しょうしゅん)ト曰フ」とあり、古い言葉であるが心が和む感じがする季題である。
〔類題 傍題〕 小六月 小春日 小春日和 小春空 小春風 小春凪
〔例   句〕 ささ栗の柴に刈らるる小春かな    鬼貫
海の音一日遠き小春かな       暁台
玉の如き小春日和を授かりし     松本たかし
白雲のうしろはるけき小春かな    飯田龍太
松島の波裏もまた小六月       高野ムツオ
枯野(かれの)
芭蕉句 旅に病んで夢は枯野をかけ廻る
〔本意・形状〕 草の枯れ尽くした蕭条とした冬の野原である。
〔季題の歴史〕 西行が実方朝臣の塚を詠んだ「朽ちもせぬその名ばかりを留め置きて枯野の薄形見にぞ見る」(『新古今集』)がよく知られる。
〔例   句〕 枯野行く人や小さう見ゆるまで     千代女
吾が影の吹かれて長き枯野かな     夏目漱石
枯野の中独楽宙とんで掌に戻る     西東三鬼
枯野馬車日当りてゆくたのしさよ    加倉井秋を
火を焚くや枯野の沖を誰か過ぐ     野村登四郎
(根本梨花)


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