わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 三日月・落花生 ◆

三日月(みかづき)
〔本意・形状〕 陰暦八月三日の月をいう。また月齢によらず、二日、三日、四日ごろまでの月をもいう。今年は九月九日が旧暦の八月三日にあたり、三日月である。暮れの早い秋の夕空に、眉の形のほっそりとした三日月が出るが沈むのも早い、その姿をめでるものである。
〔季題の歴史〕 『温故日録』に、月の眉・眉書月「万葉第六 月たちてただ三日月の眉根掻きけながくこひし君にあへるかも、同 ふりさけて若月(みかづき)見ればひとめ見し人の眉引きおもほゆるかな などといへるは、女の眉に三日月の似たるなり。八雲御抄」。『連珠合壁集』に「三日月とアラバ眉。西の空、ほのかに。かたわれ。舟。ほそき。」
古くから、眉の他にも、剣、釣り針など、細いものに例えられてきた三日月であるが、芭蕉の句には驚かされる。
〈何事の見たてにも似ず三かの月  芭蕉〉。訳「三日月の風趣は三日月だけのもの、何に見立ててもしっくりしない。」(『芭蕉全句集』雲英末雄・佐藤勝明、角川ソフィア文庫)。芭蕉はここで、古くからの表現技法である「見立て」を否定しているのである。
〔類題 傍題〕 三日の月 月の眉 眉書月 眉月 三日月眉 繊月 月の剣 新月
〔例   句〕 三日月や地は朧なる蕎麦畠         芭蕉
むだ草も穂に穂が咲くぞ三日の月      一茶
三日月の沈む弥彦の裏は海       高野素十
三日月がめそめそといる米の飯     金子兜太
三日月や夕餉は話題多きとき      坊城菫子
落花生(らっかせい)
〔本意・形状〕 マメ科の一年草、江戸時代の初めに中国を経て渡来したとされ、古くから栽培されているが、南米原産である。南京豆、唐人豆ともいわれる。晩夏に花を開き、花が終わると子房が地中に入り、黄白色の莢に成長する。莢には1~3粒の種があり、油分を多く含み栄養価も高い。炒っても煮てもよく、すりつぶしてピーナッツバターや菓子にも好まれる。主産地は千葉・茨城である。
〔季題の歴史〕 特になし。
〔類題 傍題〕 南京豆 唐人豆 そこ豆 ピーナッツ
〔例   句〕 落花生喰ひつつ読むや罪と罰   高浜虚子
落花生火鉢にかざす指が砕く   富安風生
落花生みのりすくなく土ふるふ  百合山羽公
放蕩の夜のむなしさよ落花生   小寺正三
落花生マチスピカソと論じ食ふ  清水圭志
(根本梨花)


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