わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 初秋・七夕 ◆

初秋(はつあき)
〔本意・形状〕 秋のはじめであるが、実際には八月ごろをいう。暑さも残るが、朝夕に吹く風や空の色にふっと秋が始まっている微妙な変化が感じられ、移り行く季節を実感させられる季語である。
〔季題の歴史〕 『山の井』(正保五)に「初秋{文月 けさの秋}きのふの空に変る気色もあらねど、吹く風もひやりと今朝は身に知られ、よだるかりし手足も立ち、おほいきさるまぶたも昼寝を忘れ、草の朝露も夕の虫の音も、やうやうさびしさの幼なだちと聞きなされ、桐も柳も一葉に舟出する池の心ばへなどもつらぬ」とある。
〔類題 傍題〕 初秋(しょしゅう) 新秋 孟秋 早秋 秋初め 秋あさし 秋口
〔例   句〕 初秋や海も青田の一みどり     芭蕉 
水りんとして初秋のかきつばた   樗堂
冷え冷えと闇のさだまる初秋かな  飯田蛇笏
初秋や草をくぐれる水の音     鷲谷七菜子
秋口の漁港の昼の日差しかな    茨城和生
(堀口希望)

七夕(たなばた)
〔本意・形状〕 陰暦七月七日の意で五節句の一つ。それとともにこの日行われる行事を指す。今日では陽暦七月七日に行われることが多い。一般的には六日の夕方に笹竹を立てて願の短冊をかざり、七日または八日の朝に、川や海に流して「七夕送り」とする。
〔季題の歴史〕 天の川を挟んで瞬く牽牛星と織姫星が、年に一度、鵲(かささぎ)の橋を渡って出会う日を祭る古代中国の伝説に、裁縫や習字の上達を願う乞巧奠(きこうでん)の行事が加わり、これに日本古来の「棚機(たなばた)つ女(め)」が神の来臨を待つ伝説や禊ぎの行事が重なって、奈良時代以降の宮廷の主要行事となる。それが後に民間行事としても広がった。仙台七夕がよく知られている。
〔類題 傍題〕 棚機(たなばた)七夕祭 星祭 星の秋 秋七日 星今宵 芋の葉の露 七夕竹 七夕流し
〔例   句〕 七夕や秋を定むる夜のはじめ    芭蕉
草の上に煮さまし物や星祭     園女
うれしさや七夕竹の中を行く    子規
七夕や髪ぬれしまま人に逢ふ    橋本多佳子
七夕竹惜命の文字隠れなし     石田波郷
(根本梨花)


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