白山俳句会会報 No.58

白山句会 白山句会報第58号

  □日時 2023年10月8日(日)
  □会場 横浜近代文学館2F会議室


 今回は新幹事の根本さんにお世話になり横浜で句会を開催しました。実に2012年以来の横浜の力で、久々にご参加の方々も含め総勢23名が集い、句会の醍醐味である再会の嬉しさを分かち合いました。
 また新しくご参加の方は2名(里中蛙星(あせい)さんと舩坂朗子(さえこ)さん)でしたが、初めての句会はいかがだったでしょうか。「今日行くところがある」「今日、用がある」という場所としてまたのご参加をお待ちしております。
先生のお話にあった「寛容」―心を広く持ち、受け入れること―を体現したような温かく和やかな雰囲気の句会となりました。<真美記>

〈 俳 話 少 々 〉

 芭蕉会議は古典とつながろうとする集まり。よって、勉強のために、句会報は歴史的かなづかいに統一しています。旧仮名(昭和21以前)・新仮名(昭和21以後)のどちらでゆくか、句集を編む場合など、最終的には自分で決めてください。
日本語は「かな文字」より「漢字」の方がわかりやすい(読者に親切)という場合が少なくありません。ただし、なるべく一般的なものを使いましょう。「人肌」と「人膚」の場合、「人肌」がよいということです。<海紅記>


〈 句 会 報 告 〉

 互選は三句投句、五句選の結果です。ただし、海紅選・ひろし選は詩情の有無を優先して、五句を超える数を選んでいますので、互選の点数に含めてはおりません。
なお、一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で表現を改めたものがあります。<海紅記>


☆ 谷地海紅選 ☆

肉饅の湯気立つ中華街の秋 ひろし
逝く秋の供花なき外人墓地の墓 ひろし
貯木場の今は名のみぞ海の秋 美雪
風吹けば独りと思ふ花野かな 月子
秋麗や逢ひたき人も座の中に つゆ草
花野行く「まっかな秋」を聴きながら  朗子
元町の西洋菓子屋小鳥来る うらら
まだ白き姿を見せて酔芙蓉 馨子
手をつなぎ秋の道ゆく親孝行 こま女
爽やかやノースリーブのツーリスト 真美

☆ 梅田ひろし選 ☆      〇印は特選

日かげれば黄をやや強め秋の蝶 海紅
庭園に寒露の風の吹き抜ける 蛙星
うたた寝の夢醒め独りそぞろ寒
雁や異国に眠る十字墓碑
月餅の厚さ褒め合ひ天高し つゆ草
繊細なる書簡の小文字秋深し つゆ草
海風に色を増したか秋薔薇 喜美子
外つ国の人眠る丘木の実落つ 喜美子
嫁ぐ日のうれしさびしさ秋の風 京子
蕎麦咲いて廃屋沈むごとくなり 安愚楽
風吹けば独りと思ふ花野かな 月子
庭園の萩の膨らむ小路かな ひぐらし
散り際のためらひ見せて秋の薔薇 うらら
米虫を選り分けてゐた戦後の子 梨花
浜風や銀杏並木の老夫婦 玄了
草の花霧笛橋までもう少し 真美

☆ 互選結果 ☆

5 蕎麦咲いて廃屋沈むごとくなり 安愚楽
4 秋麗や逢ひたき人も座の中に つゆ草
4 月餅の厚さ誉め合ひ天高し つゆ草
4 日かげれば黄をやや強め秋の蝶 海紅
4 風吹けば独りと思ふ花野かな 月子
4 来し方を海に浮べて秋の海 喜美子
4 旅人の顔で見る海秋ひと日 うらら
4 おもかげは風に揺れをり猫じやらし 馨子
3 老いるとはいつも時間の見える秋 梨花
3 城跡の空堀に積む枯葉かな 梨花
3 朝市の姉さん被りの梨求め 和子
3 異文化の根付く街並み秋の風 蛙星
3 白萩のゆれる路地裏猫の道 エール
3 海を見ん蛙星に逢はん秋深し 海紅
3 太宰から井伏に冬の影の文
3 海は秋鷗は低く低く飛び ひろし
3 外つ国の人眠る丘木の実落つ 喜美子
2 雁や異国に眠る十字墓碑
2 うたた寝の夢醒め独りそぞろ寒
2 愛犬は抱えて下る秋深し 海紅
2 繊細なる書簡の小文字秋深し つゆ草
2 枇杷熟るる見れば故郷の庭になり 静枝
2 恨みたる陽が心地良い神無月 明子
2 散り際のためらひ見せて秋の薔薇 うらら
2 会ひたくて急ぐ坂道いわし雲 馨子
2 海風に色を増したか秋薔薇 喜美子
2 朝寒や噴水の先の氷川丸 エール
2 敗戦の郷の西日を九十路
2 終活の答へに触れず秋薊 宏美
2 草の花霧笛橋までもう少し 真美
1 秋晴れや帽子つば裏必笑と 光江
1 ベビーカー帽子に蜻蛉翅やすめ 光江
1 名月やスカイツリーも主役下り 惠基
1 公園に子等に負けじと蟬しぐれ 惠基
1 炎天も風の道あり百日紅 静枝
1 元町の西洋菓子屋小鳥来る うらら
1 十字路の四隅に紅し曼珠沙華 エール
1 赤とんぼいづれの人も名のらずに 宏美
1 外に出よと月に打たれてする電話 瑛子
1 とつおいつノウゼンカヅラの作句坂 朗子
1 元町公園萩咲き恋を語りをり 正子
1 文学館丘へ登れば富士の新雪 月子
1 神道の喪中の友に新米を 和子
1 南吉の童話読む頃彼岸花 京子
1 浜の秋句会のありてゆるり愛づ 明子
1 もの憂きや日に改まる猛残暑
1 米虫を選り分けてゐた戦後の子 梨花

☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、青栁光江、宇田川うらら、梅田ひろし、大江月子、荻原貴美、尾崎喜美子、尾見谷静枝、佐藤馨子、里中蛙星(初参加)、田中正子、谷 美雪、寺元 琳(江田浩司)、内藤玄了、中村こま女、根本梨花(文子)、船坂朗子(初参加)、三木つゆ草、宮野惠基、宮野明子、村上エール、谷地元瑛子、梶原真美(以上23名)

☆ 欠席投句者 ☆ <順不同・敬称略>
礒部和子、植田ひぐらし、加藤 悠、柴田 憲、世羅安愚楽、丹野宏美、西野由美、備後春代、森田京子(以上9名)

<以上取りまとめ、真美記>
< 了 >



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