白山俳句会会報 No.57

白山句会 白山句会報第57号

  □日時 2023年6月11日(日)
  □会場 上野 宋雲院


 当日は、明け方まで激しく降っていた雨が、上野に着く昼頃にはあがり、どんよりとした梅雨空でした。会場の宋雲院は、新しい青畳が敷かれていて、気持ちよく句会を開くことができました。参加者は総勢16名で、初参加の宮野惠基明子様ご夫妻と世羅陽一郎様のご紹介から始まりました。
宮野様ご夫妻は、香川県高松市から東京へ転居されたのを機会に、先生が句会へお誘いくださったとのこと。宮野惠基氏は歌人である一方で、歌枕に関する御著書が何冊もあり、芭蕉会議にはすでに存じ上げている方がたくさんいらっしゃいました。奥様の明子さんは句会が初めてとのことで、選句のみに参加してくださいました。
世羅陽一郎(俳号安愚楽)氏は、昨年、先生が富士見市民大学(埼玉県富士見市)の依頼により公開講演と講座をされた縁で芭蕉会議に参加された方です。世羅さんは、若い頃から口語俳句に精通されてきたそうです。
なお、披講の前に先生から「芭蕉会議への提案」という題でお話がありました。詳細は「会員フォーラムNo.5451 - 更なる充実と刷新を視野に」をご参照ください。
個人的には、俳句は座の文芸、座が何より大事であると改めて気づかされた句会でした。<エール記>

〈 俳 話 少 々 〉

 地球上を三年余り混乱させた新型コロナウィルス禍はいろいろなことを考えさせた。「お前はなぜ芭蕉や蕪村、すなわち俳諧で人生を決めてしまったのか」という自問自答もその一つだ。その結果、「座の文芸」の「座」の魅力にとりつかれたからという答えを得た。ボクはたぶん「人なつこい」性格で、少し親しくなると俳句会という「座」に誘うものだから、人によっては迷惑だったにちがいないが、親を亡くしたころから「世の中は取り返しのつかないことばかり」という強迫観念にとりつかれ、「逢えるときには逢っておこう」と思う気持ちを強めた。芭蕉さんの時代は社会的地位や身分の違いがはっきりしているのに、俳諧の「座」に連なれば、武家も乞食坊主も対等だった。対等ならば、人生の悲喜劇を素直に共有できる。AIと同席してもそれはむずかしいであろう。よって、足腰と丁寧に付き合いながら、身近に共鳴し合う「座(芭蕉会議)」がある暮らしを大切にしたいと思う。<海紅記>


〈 句 会 報 告 〉

 互選は三句投句、五句選の結果です。ただし、海紅選は詩情の有無を優先して、五句を超える数を選んでいますので、互選の点数に含めてはおりません。なお、一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で表現を改めたものがあります。<海紅記>


☆ 谷地海紅選 ☆

〇印は本選
医王寺の翁も見たる椿かな 安愚楽
雨上がり若葉も露のピアスして 惠基
不自由を少し授かり梅雨に入る うらら
交番に婦警の歩哨更衣
梅雨晴れ間浅草行きの赤いバス エール
梅雨晴れ間先づは上野の藪蕎麦へ エール
大鳥居朱の新たなり澪涼し 月子
自転車で過ぎる若僧夏衣 つゆ草
梅雨間近兎くつきりまんまる月 美雪
梅雨入りや粋な縞柄人目引き 美雪
おかつぱの襟足さらら風薫る 由美
風薫るアイス頬張る老夫婦 京子
新しき傘うつ音やさつき雨 貴美
五月雨や心を見よといふ標語 真美
アメ横は暑し駄菓子の叩き売り 真美
研屋きて六月の風厨まで 和子

☆ 互選結果 ☆

6 ひきがへる一寸動きてまた一寸 蛙星
6 ふるさとにつながる鉄路梅雨に入る 海紅
5 雨上がり若葉も露のピアスして 惠基
4 香の香もふりこめらるる梅雨の空 惠基
4 不自由を少し授かり梅雨に入る うらら
4 研屋きて六月の風厨まで 和子
4 蓮池の咲き時を知る屋台かな つゆ草
3 立ち葵人待ち顔の高さかな 海紅
3 虚空蔵おはす伽藍や青時雨 馨子
2 梅雨滂沱イージス艦重く在る港 瑛子eiko
2 小網代に蛍待つ間や風の闇 瑛子eiko
2 ザワザワと桑を食む音雨のごと 喜美子
2 紫陽花は水の器といふさうな 美知子
2 紫陽花と雨に濡れるも潔し 美知子
2 蓴菜が箸から逃れ笑みこぼれ 和子
2 梅雨間近車窓に燻むスカイツリー ふみ子
2 老鶯の声のしたたる故郷かな 梨花
2 谷川の笹の葉に載せ鮎売らる 由美
2 五月雨や心を見よといふ標語 真美
2 法被着たほほづき売りの声響く 高雄
2 六月の雨再会の町つつむ 海紅
1 枯れさうな赤紫陽花も撮りにけり 貴美
1 梅雨空を友に楽しき句会かな 貴美
1 病葉を丁寧に掃き会釈して 梨花
1 読みかけの本の積まれて梅雨に入る 京子
1 おかつぱの襟足さらら風薫る 由美
1 初野分名残りの風に木の揺らぐ 惠基
1 濃紫陽花その瑠璃色の艶やかや ひろし
1 自転車で過ぎる若僧夏衣 つゆ草
1 傘差さぬ日もあつてよき梅雨かな 真美
1 アメ横は暑し駄菓子の叩き売り 真美
1 梅雨に入る逢ふことのみを楽しみに 喜美子
1 梅雨入りや粋な縞柄人目引き 美雪

☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、青柳光江、宇田川うらら、荻原貴美、尾崎喜美子、梶原真美、佐藤馨子、世羅安愚楽、内藤玄了、内藤高雄、根本梨花、平塚ふみ子、三木つゆ草、宮野惠基、宮野明子、村上エール(以上16名)

☆ 欠席投句者 ☆ <順不同・敬称略>
礒部和子、梅田ひろし、大江月子、加藤悠、椎名美知子、谷美雪、丹野宏美、中里蛙星、西野由美、古崎笙、森田京子、谷地元瑛子(以上12名)

<以上取りまとめ、エール記>
< 了 >



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