白山俳句会会報 No.43

白山句会 白山句会報第43号

  □日時 2020年2月9日(日)
  □会場 浜離宮恩賜庭園 芳梅亭 (集会場)
 
 昨年11月の小石川後楽園に続き、国指定特別名勝・特別史跡の浜離宮庭園を吟行しました。雲ひとつない快晴の空の下、菜の花や紅白の梅がさまざまに咲いており、点々と膨らむ蕾や池に浮かぶ水鳥の姿がありました。世間を騒がせているウィルスや余寒の厳しさの影響か、常連の方々の欠席が多かったのですが、2名のゲスト―吉田千嘉子さん(谷地先生の後輩で、八戸にお住いの俳人)と寺澤始さん(俳人で、国語教師)―を迎え、普段とは異なる雰囲気で学ぶ点の多い句会となりました。<真美記>


〈 俳 話 少 々 〉

 海紅が教職から解放されたことを好機に、芭蕉会議のホームページがリニューアルされた。それを覗いてくれた友人、吉田千嘉子(「たかんな」主宰)、寺澤始(「未来図」同人)の御両人が参加してくれた。そして、少しでも見込みのある表現を見逃すことなく、たくさん選句してほしいとお願いし、講評もしてもらった。厳選と違うから、文語や文法の視点から、貴重な助言を多く聞くことができた。人生には常に新しい風が吹くことが望ましい。親和と寛容を学ぶために、このような機会がふたたび、みたびと増えてゆくことを夢見ている。<海紅記> 


〈 句 会 報 告 〉

 一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で、表現を改めた句が含まれています。また、今回は制限なく選句をお願いした吉田千嘉子・寺澤始、両氏の選、及び海紅選も全体の点数に含めました。よって厳密な意味での互選結果でないことを御了承ください。<海紅記> 


☆ 谷地海紅選 ☆

菜の花やかすかな潮の香の中に 馨子
早春の風にまかせて鴨ゆるる 馨子
ビル街の漣となる花菜風
歌ふかに水仙背中合はせにて
日だまりに梅ほころびてビルの影 邦雄
甘酒を半分わたす連れ散歩 邦雄
踊り子のしなる指先枝垂梅
実梅より花梅が先浜御殿
みづかきの反転自在春の鴨 千嘉子
老松の気骨見えたり春の園 つゆ草
水門の閉まる離宮の春寒し 真美
梅の香の一本道に師の佇てり 梨花
昔から長湯せぬ癖梅の宿 月子
節分や遠い日の父そして声 静枝
動くとも見えず動きて春の鴨 ひろし

☆ 吉田千嘉子選 ☆

草の芽の恥づかしさうに待つ明日 うらら
浜離宮冴え返る空広やかに うらら
実梅より花梅が先浜御殿
風光る男松女松の艶姿
佐保姫の来たるや三百年の松 ひろし
動くとも見えず動きて春の鴨 ひろし
   あはひ
汐入の土の間に草萌ゆる
喜美子
喧噪もそしらぬ風に浮寝鳥 喜美子
おだやかに呼び止むる声沈丁花 しのぶこ
痩せすぎの月浮いてをり春浅し ふみ子
昔から長湯せぬ癖梅の宿 月子
菜の花やかすかな潮の香の中に 馨子
梅の香の一本道に師の佇てり 梨花
節分や遠い日の父そして声 静枝
口の皺集めデコポン食む三時 和子
ビル街の漣となる花菜風
木に語るだけ語らせて春の風 海紅


☆ 寺澤始選 ☆

スイッチの入る立春句帳買ふ つゆ草
老松の気骨見えたり春の園 つゆ草
みづかきの反転自在春の鴨 千嘉子
水門の閉まる離宮の春寒し 真美
踊り子のしなる指先枝垂梅
梅の香の一本道に師の佇てり 梨花
菜の花やかすかな潮の香の中に 馨子
手作りの沢庵今日も膳にのる 右稀
昔から長湯せぬ癖梅の宿 月子
草の芽の恥づかしさうに待つ明日 うらら
動くとも見えず動きて春の鴨 ひろし
おだやかに呼び止むる声沈丁花 しのぶこ
痩せすぎの月浮いてをり春浅し ふみ子
春浅し不協和音の朝支度 窓花
剪定の枝先哀し梅の花 うらら
金黒羽白光の水の目をひらく 梨花
山茶花の散りて又咲く紅の列 静枝
大寒や骨にひび入り眠りたる 由美
菜の花の隣は鳥の菜の畑 香粒
改元の苔まとふ梅背の低し 月子
狩場跡ふくら雀の忙しなし 香粒
初めての口紅色に梅ひらく 梨花
一本丸ごと大根煮て下戸の食ふ 紅舟
風光る木々それぞれの影淡く 千嘉子
鉢植えの土を入れ替へ春立ちぬ 真美
水仙の奏づるごとき風の音 智子
夢に追ふ道はひとすぢ薄霞

☆ 互選結果 ☆

老松の気骨見えたり春の園 つゆ草
6 動くとも見えず動きて春の鴨 ひろし
5 菜の花やかすかな潮の香の中に 馨子
5 梅の香の一本道に師の佇てり 梨花
5 水仙の奏づるごとき風の音 智子
4 ビル街の漣となる花菜風
4 風光る木々それぞれの影淡く 千嘉子
3 草の芽の恥づかしさうに待つ明日 うらら
3 水門の閉まる離宮の春寒し 真美
3 金黒羽白光の水の目をひらく 梨花
3 痩せすぎの月浮いてをり春浅し ふみ子
3 風光る男松女松の艶姿
3 昔から長湯せぬ癖梅の宿 月子
3 菜の花の隣は鳥の菜の畠 香粒
3 改元の苔まとふ梅背の低し 月子
3 初めての口紅色に梅ひらく 梨花
3 早春の風にまかせて鴨ゆるる 馨子
3 節分や遠い日の父そして声 静枝
3 紅梅の空白梅の空蒼し 千嘉子
3 喧噪もそしらぬ風に浮寝鳥 喜美子
2 むら雀見習ひもゐて狩場跡 香粒
2 スイッチの入る立春句帳買ふ つゆ草
2 踊り子のしなる指先枝垂梅
2 みづかきの反転自在春の鴨 千嘉子
2 山茶花の散りて又咲く紅の列 静枝
2 陽だまりに梅ほころびてビルの影 邦雄
2 木に語るだけ語らせて春の風 海紅
2 ただひとり独り籠りて寒ざらひ 窓花
2 庭園に入れば春風おとなしき 海紅
2 佐保姫の来たるや三百年の松 ひろし
2 おだやかに呼び止める声沈丁花 しのぶこ
1 手作りの沢庵今日も膳にのる 右稀
1 剪定の枝先哀し梅の花 うらら
1 朝支度不協和音の春浅し 窓花
1 清らかな紅白梅も青空も 智子
1 春の陽やすずめ木かげでかくれんぼ 邦雄
1 歌ふかに水仙背中合はせにて
1 大寒や骨にひび入り眠りたる 由美
1 白梅に己の潔さ問うてみる
1 狩場跡ふくら雀の忙しなし 香粒
1 一日の隅に飾らる花すみれ しのぶこ
1 実梅より花梅が先浜御殿
1 一本丸ごと大根煮て下戸の食ふ 紅舟
1 浜離宮冴え返る空広やかに うらら
1 梅が香は風音に消ゆ浜離宮 ふみ子
1 その姿立ち去り難く枝垂れ梅 馨子
1 甘酒を半分わたす連散歩 邦雄
1 口の皺集めデコポン食む三時 和子
1 この先は入るべからず夜の梅 ふみ子
1 鉢植えの土を入れ替へ春立ちぬ 真美
1 ひと枝に思ひのままや紅白梅 つゆ草
1    あはひ
汐入の土の間に草萌ゆる
喜美子
1 夢に追ふ道はひとすぢ薄霞


☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>(以上、16名)
谷地海紅、鈴木香粒、大石しのぶこ、吉田千嘉子、水野ムーミン(改め、紅舟)、内藤邦雄、三木つゆ草、大江月子、宇田川うらら、佐藤馨子、寺澤始、尾見谷静枝、根本梨花、平塚ふみ子、月岡糀、梶原真美
☆ 欠席投句者 ☆ <順不同・敬称略>(以上、8名)
礒部和子、梅田ひろし、尾崎喜美子、西野由美、古崎笙、眞杉窓花、村上智子、山崎右稀

<以上取りまとめ、梶原真美>
< 了 >




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