◆ 兼題 | ||
※ 兼題は二題、内一題を選び1句を投句して下さい。 | ||
2025年3月末日〆切 | 春雨・山吹 | 兼題解説 |
2025年7月末日〆切 | 涼し・昼顔 | 兼題解説 |
鳩の会会報123(令和7年7月末締切分) |
涼し・昼顔 |
【Advice】 古人は「家の作りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑きころ、わろき住居は堪へがたき事なり」(兼好・徒然草55)と言いました。「涼し」はこうした堪えがたさを前提にした言葉であります。「昼顔」は「昼顔に米搗き涼むあはれなり」(芭蕉・続の原)とあるように、季題としては未成熟な感じが残る言葉。皆さんが欠け替えのない一日をどんな俳句を詠んで消化したのか。それぞれのお顔を思い浮かべながらコメントさせてもらいました。日々お大切に。 句の評価はABC三つの符合で評価しています。その意味するところは以下の通りです。 A:省略が利いて、抒情あきらかな句 B:季感が備わるスケッチ C:焦点定まらぬつぶやき鳩の会 |
A ジジババに会ひに来る子ら髪涼し エール 「ジジババ」に会いに来る夏休みの孫たちを「髪涼し」と称えた。刈り上げたり、結んだりした姿に成長を喜んでいる。 |
A 新しき白足袋履いて朝涼し 千恵美 「足袋」は古来冬季だが、「白足袋」は言外に礼装を匂わせて無季。「新しき足袋」と「朝」が響き合って、「涼し」という主観で詩趣を構成。 |
A 涼しさや版木に残る海の色 馨子 刷り上がった木版画でなく、版木に目を向けた点に趣向あり。仕事を終えた余韻の味わいがおもしろい。 |
A 薄様を仮名の流るる涼しさよ 由美 「薄様」は雁皮や楮を材料にした鳥の子紙で詩歌の書写によく使われる。「仮名の流るる」とあるから、ここは和歌か。連綿のさまに涼しさを発見したのだろう。平明な点は力量。 |
A 公園のラジオ体操朝涼し ちちろ 「公園」と「ラジオ体操」は客観(対象)。それを主観「朝涼」で結んで詩(情趣)が生まれた。平明は腕前ゆえ、恥じることはない。 |
A 駅ごとに涼しさ増すよ夜行バス 和子 「夜行バス」といえば主要な駅のみに停車する高速バスを思い浮かべる。だから、停車する駅ごとに増してゆく涼しさが実感できるのだろう。北へ向かうのか、それとも高原か。 |
B 根津辺り碑の裏回り風涼し 安愚楽 江戸が残る「根津」。ゆえに「碑」も多い。この二つの事実を適切な主観、ここでは〈涼しい風〉で結ぶと詩(情趣)が生まれる。その他の無駄を捨てれば「根津の碑をめぐる楽しみ風涼し」ほどか。 |
B 古びたる父の座椅子の涼しけれ 蛙星 「古び」と「父の座椅子」は客観(対象)。それを主観「涼し」で結んで詩(情趣)が生まれた。但し、「涼しけれ」を、係り結びの「こそ」を省略した形容詞「涼し」の已然形と説く俳人が多いが乱暴。係り結びの省略は「係り」の方でなく、「結び」の述語(用言)であったはず。すなわち「涼しさよ」のたぐいでよい。 |
B 掛け軸の野山の静寂涼しけり つゆ草 「掛け軸の野山」に「静寂」を感じた点が主観。「涼しけり」は語法上「涼しかりけり」が正しい(「けり」は連用形接続ゆえ)。「からまつはさびしかりけり/たびゆくはさびしかりけり」(白秋「落葉松」)がその例。中七・下五「野山に静寂あり涼し」などと逃げておきましょう。 |
B たぷたぷと暗き上げ潮船涼し eiko 「暗き」が「涼し」の情になじまない。擬声語「たぷたぷ」を生かして、「たぷたぷと上げ潮の音船涼し」ほどか。 |
B セキレイと日陰を歩く朝涼し 真美 「セキレイ」にそのつもりはなかろうが、〈一緒に日陰を選んで歩く〉という主観のおもしろさ。「セキレイ」は年中見かけるが小鳥ゆえ秋季。夏季の「朝涼」との重なりを再検討。 |
B 涼しさや藍の傘さす午後の道 貴美 個人的に「藍」は好きな色だが、この句を読むと「涼しさ」を呼ぶ色のようである。「午後の道」には暑すぎる時間帯を暗示する意図があるのかもしれない。 |
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A 昼顔や更地となりし本屋跡 鹿鳴 「昼顔」と「本屋跡」が客観(対象)。この二者を「更地となりし」がしっかりと結びつけて詩趣を構成。華やかさに欠ける「昼顔」が「更地」とか「跡」に似合う。 |
A 昼顔や無人駅前駐輪場 ひぐらし 「昼顔」と「無人駅前駐輪場」は客観(対象)。詠嘆の「や」で昼顔賛歌になった。 |
B 昼顔の澄まし顔して咲いてをり 千年 「昼顔」という客観(対象)の美しさを「澄まし顔」という主観でとらえた。やや散文的だが平明な点は力量。 |
B 昼顔や猫すりよせる揺れわづか 美知子 詠嘆の「や」で「昼顔」賛歌とわかる。その「昼顔」に「猫」が顔をすり寄せる景か。「揺れわづか」はわからなかった。 |
B 鳴き砂の浜の昼顔うなづきて 梨花 海浜の「鳴き砂」と「浜の昼顔(浜昼顔)」は客観(対象)。その二つを適切な主観で結べば詩(情趣)が生まれる。無駄を捨てれば「鳴き砂に浜昼顔もうなづける」ほどか。 |
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