| 【花野】華やぎにまじる淋しさ。 |
| ◎悪戯な風に花野が語り出す |
礒部 和子 |
画竜点睛。 |
| ◎はぐれ雲花野眺むるごとく浮き |
鷲田 裕克 |
画竜点睛。 |
| ◎妻と来てはなればなれに大花野 |
梅田ひろし |
画竜点睛。 |
| ◎霊柩車花野を過ぎてゆきにけり |
松村 實 |
作者の目優し。 |
| ◎搾りたて牛乳温し大花野 |
ひぐらし |
取合せ穏当。 |
| ○人為なき筑波の山の花野かな |
竹内 林書 |
素直なり。 |
| ○大花野だれも一人になりたがる |
安居 正浩 |
述懐重し。 |
| ○眼帯の取れし恵みや花野風 |
吉田いろは |
「恵み」大仰なり。 |
| ○遠目より風の冷たき花野かな |
根本 文子 |
「冷たき」重し。 |
| 花野道仲良し小道通い道 |
水野千寿子 |
中七を視覚的に。 |
| 静かなる花野に少女描きたし |
小出 富子 |
少女は居るや否や。 |
| 幾度も振り返りたき花野かな |
つゆ草 |
「振り返りたる」。 |
| 花野道加薬ご飯とゆで玉子 |
谷 美雪 |
「道」不要。 |
| くったくや座せば花野に風渡る |
大江 月子 |
「くつたくの」。「つ」大きく。 |
| ゆつくりと花野に足を踏み入れる |
尾崎喜美子 |
上五の意図弱し。 |
| 花野ふと少女のスキップ風ゆれる |
西野 由美 |
「ふと」「ゆれる」不要。 |
| 花野にて冠ひらひらかくれんぼ |
中村美智子 |
中七の景色難解。 |
| 行くところ花野なるべし古希迎ふ |
清水さち子 |
「なるべし」不要。 |
| 花野なり百姓一揆の小さき碑 |
堀口 希望 |
「なり」再考。 |
| 浮かれでて心は空に花野道 |
天野 さら |
「心は空に」難解。 |
| 走りたき花野に試歩杖握り立つ |
櫻木 とみ |
座五重し。復調を祈る。 |
| 過ぎし日々思ひ出しつつ花野ゆく |
ちちろ |
素直なり。 |
| 花野踏んでアガサクリスティ第一作 |
谷地元瑛子 |
心余りて言葉足らざる。 |
| ゆれている風情に憩ふ花野かな |
堀 眞智子 |
「ゐる」。素描に終わる。 |
| 鉄橋を渡れば花野ひろがりぬ |
中村 緑 |
素描に終わる。 |
| 大花野下り来る人ら目に入りぬ |
柴田 憲 |
素描に終わる。 |
| パステルの美瑛の丘の花野かな |
天野喜代子 |
素描に終わる。 |
| 種差の海に真向かふ花野かな |
千年 |
素描に終わる。 |
| 少年も犬も花野の中に消ゆ |
金井 巧 |
素描に終わる。 |
|
| 【鶏頭】鮮烈な色と形をどう詠むか。 |
| ◎葉鶏頭は一人ぼつちのフラメンコ |
根本 文子 |
姿情整う。 |
| ◎鶏頭や乗つてすぐ着く渡し舟 |
礒部 和子 |
姿情整う。 |
| ◎戸を開けし日本の家や鶏頭花 |
谷地元瑛子 |
「開け放つ」。 |
| ○亡き父の撒きし鶏頭今に燃ゆ |
尾崎 弘三 |
「今に」不要。 |
| ○鶏頭やグランマの織る机掛け |
西野 由美 |
映発するものあり。 |
| ○鶏頭のかなたに衛星発射台 |
松村 實 |
もう少し近くてもよい。 |
| ○鶏頭はいのちの赤よ獺祭忌 |
堀口 希望 |
穏当なる把握。 |
| ○通学路鶏頭撫でるいつもの子 |
天野 さら |
玉のような日常の一景。 |
| ○鶏頭の勝気に咲いて坪の庭 |
竹内 林書 |
中七の重さ気になるが。 |
| ○鶏頭を正面小さな生け花展 |
櫻木 とみ |
「正面」がよい。 |
| ○ダム工事中断の地の鶏頭花 |
金井 巧 |
時事なるべし。 |
| 鶏頭に野性の薄れ人もまた |
安居 正浩 |
述懐重し。 |
| 鶏頭の夜も気負ひてをりにしか |
梅田ひろし |
述懐重し。 |
| 鶏頭花にんげんいまだ丸みなし |
ちちろ |
述懐重し。 |
| 鶏頭にべろべろさわれば子らの来る |
大江 月子 |
「さはる」 |
| いつまでも赤鮮やかに鶏頭花 |
天野喜代子 |
素描に終わる。 |
| 鶏頭や庭の番人ごとくあり |
鷲田 裕克 |
「番人の如く鶏頭庭に立つ」。 |
| 片想ひされど初恋鶏頭花 |
ひぐらし |
「片想ひされど」不要。 |
| 一本の鶏頭に先づ見られゐし |
千年 |
「見られたる」「みつめらる」。 |
| 鶏頭や草に交じりて咲くもあり |
堀 眞智子 |
素描に終わる。 |
| 鶏頭のそばでブランコゆれている |
中村 緑 |
素描に終わる。 |
| 鶏頭のなかに一本仏顔 |
吉田いろは |
素描に終わる。 |
| 鶏頭のビロード肌に触れてみる |
尾崎喜美子 |
素描に終わる。 |
| 道の辺の地蔵に供えし鶏頭花 |
中村美智子 |
素描に終わる。 |
| 鶏頭は好かんと言ひて生えしまま |
水野千寿子 |
素描に終わる。 |
| 鶏頭や茎も花色宿しをり |
清水さち子 |
素描に終わる。 |
| 青空に緋色鶏頭燃えている |
小出 富子 |
素描に終わる。 |
| 子規の目に咲きて華やぐ鶏頭花 |
つゆ草 |
素描に終わる。 |
| 鶏頭の鶏冠の下の種の海 |
谷 美雪 |
素描に終わる。 |
| 真すぐな痩せ鶏頭や道の辺に |
柴田 憲 |
素描に終わる。 |
|
| 【蓑虫】ミノガの幼虫。小枝や葉を糸で綴り、その中に住む姿を蓑を着た姿に見立てた。故事多し。 |
| ◎蓑虫や寧日送る母たらん |
大江 月子 |
自照の心新鮮。 |
| ◎時々は蓑虫の如籠もりたし |
つゆ草 |
「ある時は」。 |
| ◎蓑虫と話せるやうになつてきし |
千年 |
「ゐし」。 |
| ◎蓑虫や好きなもの着て揺れる頃 |
西野 由美 |
新しき蓑虫像。 |
| ◎首出している蓑虫は鳴くためか |
安居 正浩 |
鳴く姿を想像して新鮮。 |
| ○蓑虫や単身赴任三年目 |
ひぐらし |
こんな時代もあった。 |
| ○蓑虫や子は集団にとけこめず |
金井 巧 |
こんな時代もあった。 |
| ○蓑虫をヒョイとつついて下校する |
尾崎喜美子 |
素直なり。 |
| ○雨よ風やさしくあれよ蓑虫に |
小出 富子 |
素直なり。 |
| 蓑虫や空中ブランコハンモック |
谷 美雪 |
素直なり。 |
| 蓑虫や届かぬ恋が風のなか |
吉田いろは |
素直なり。 |
| 蓑虫は世渡り上手風まかせ |
礒部 和子 |
素直なり。 |
| 蓑虫のどうにもひつこみ思案かな |
梅田ひろし |
素直なり。 |
| 蓑虫や一番星をそつと見る |
中村 緑 |
「そつと」不要。 |
| 蓑虫の父よと鳴けば父の声 |
天野 さら |
虚子に「父よと鳴きて母もなし」 |
| 蓑虫や湖畔のボートに雨の糸 |
松村 實 |
取合せ難解。 |
| 小学校休ませ訪ひし蓑虫庵 |
谷地元瑛子 |
蓑虫庵の句になった。 |
| 蓑虫をあまた生かして立枯るる |
根本 文子 |
立ち枯れの句になった。 |
| 風の音に戯れゆるる蓑虫は |
天野喜代子 |
素描に終わる。 |
| 蓑虫も器用不器用あるやうで |
堀 眞智子 |
素描に終わる。 |
| 枝先に蓑虫一つ風に揺れ |
尾崎 弘三 |
素描に終わる。 |
| 蓑虫を邪険にころがす童をり |
水野千寿子 |
素描に終わる。 |
| 蓑虫の蓑のうちなる天地かな |
堀口 希望 |
素描に終わる。 |
| 鬼の子が這い出んとして糸揺らす |
中村美智子 |
素描に終わる。 |
| 蓑虫の口モグモグを見てしまふ |
清水さち子 |
素描に終わる。 |
| 蓑の口鬼の捨て子か動きたり |
柴田 憲 |
素描に終わる。 |
| 蓑虫やいやしきこころ恥がはし |
ちちろ |
素描に終わる。 |
| 蓑虫やゆらゆらゆらと午後の庭 |
鷲田 裕克 |
素描に終わる。 |
| 蓑虫は消えしと古技術人の言ふ |
櫻木 とみ |
難読にて誤読を恐る。 |
| 蓑の虫よ吾も孤誚の春夏秋冬 |
竹内 林書 |
難読にて誤読を恐る。 |
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| 海紅切絵図 |
| 遊び場は鉄道用地花野風 |
海 紅 |
| 銀巴里は二度行つただけ鶏頭花 |
同 |
| 蓑虫が好き一人旅もつと好き |
同 |
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