| 寒し(さむし) |
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| 芭蕉句 | 塩鯛の歯ぐきも寒し魚の店(たな)(薦獅子集) 寒けれど二人寐る夜ぞ頼もしき(笈の小文) 葱(ねぶか)白く洗ひたてたるさむさ哉(韻塞) |
| 〔本意・形状〕 | 皮膚感覚の寒さのほかにも、心理的な寒さ、客観的な情景の寒さなど、様々な寒さがある。 |
| 〔季題の歴史〕 | 「葦辺ゆく鴨の羽交に霜ふりて寒き夕は大和し思ほゆ」志貴皇子(『万葉集』巻一雑)、「み吉野の山の白雪つもるらしふる里寒くなりまさるなり」坂上是則(『古今集』巻六冬)古来よりこの季題を詠んだ名歌、名句は数多い。 |
| 〔類題 傍題〕 | 寒気・寒夜・寒曉・月寒し・寒さ |
| 〔例 句〕 | うづくまる薬の下の寒さかな 丈草 椋鳥と人に呼ばるる寒さかな 一茶 みとりする人は皆寝て寒さかな 正岡子規 水枕ガバリと寒い海がある 西東三鬼 しんしんと寒さが楽し歩みゆく 星野立子 |
| 春(はる) | |
| 芭蕉句 | 春なれや名もなき山の薄霞(野ざらし紀行) おもしろやことしの春も旅の空(去来文) 春もやゝけしきとゝのふ月と梅(薦獅子集) |
| 〔本意・形状〕 | 陰暦では新年と春がほぼ一致していたので、春というと新年の事であった。 「はる」とは草木の芽や根が「張る」からだとも、田畑を「墾(は)る」からともいい、また「万物発(は)る」などの説もある。 |
| 〔季題の歴史〕 | (『万葉集』巻二十一)に「新しき年の始めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よごと)」大伴家持と、年頭のめでたさがうたわれている。 |
| 〔類題 傍題〕 | 初春・今朝の春・千代の春・花の春・新春・迎春 |
| 〔例 句〕 | 天秤や京江戸かけて千代の春 芭蕉 薦を着て誰人います花の春 芭蕉 明けの春弓削道鏡の書が好きで 虚子 おいらくのほのぼのかなし明けの春 富安風生 年寄れど娘は娘父の春 星野立子 |
| (根本梨花) | |