わくわく題詠鳩の会兼題解説

◆ 兼題解説 寒し・春 ◆

寒し(さむし)
芭蕉句 塩鯛の歯ぐきも寒し魚の店(たな)(薦獅子集)
寒けれど二人寐る夜ぞ頼もしき(笈の小文)
葱(ねぶか)白く洗ひたてたるさむさ哉(韻塞)
〔本意・形状〕 皮膚感覚の寒さのほかにも、心理的な寒さ、客観的な情景の寒さなど、様々な寒さがある。
〔季題の歴史〕 「葦辺ゆく鴨の羽交に霜ふりて寒き夕は大和し思ほゆ」志貴皇子(『万葉集』巻一雑)、「み吉野の山の白雪つもるらしふる里寒くなりまさるなり」坂上是則(『古今集』巻六冬)古来よりこの季題を詠んだ名歌、名句は数多い。
〔類題 傍題〕 寒気・寒夜・寒曉・月寒し・寒さ
〔例   句〕 うづくまる薬の下の寒さかな     丈草
椋鳥と人に呼ばるる寒さかな     一茶
みとりする人は皆寝て寒さかな    正岡子規
水枕ガバリと寒い海がある      西東三鬼
しんしんと寒さが楽し歩みゆく    星野立子
春(はる)
芭蕉句 春なれや名もなき山の薄霞(野ざらし紀行)
おもしろやことしの春も旅の空(去来文)
春もやゝけしきとゝのふ月と梅(薦獅子集)
〔本意・形状〕 陰暦では新年と春がほぼ一致していたので、春というと新年の事であった。
「はる」とは草木の芽や根が「張る」からだとも、田畑を「墾(は)る」からともいい、また「万物発(は)る」などの説もある。
〔季題の歴史〕 (『万葉集』巻二十一)に「新しき年の始めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よごと)」大伴家持と、年頭のめでたさがうたわれている。
〔類題 傍題〕 初春・今朝の春・千代の春・花の春・新春・迎春
〔例   句〕 天秤や京江戸かけて千代の春     芭蕉
薦を着て誰人います花の春      芭蕉
明けの春弓削道鏡の書が好きで    虚子
おいらくのほのぼのかなし明けの春  富安風生
年寄れど娘は娘父の春        星野立子
(根本梨花)


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