白山俳句会会報 No.69

白山句会 白山句会報第69号

  □日時 2026年8月5日~19日 第17回ネット句会
  □会場 「芭蕉会議」サイト会員フォーラム(専用掲示板)


 今夏は、熊本地震や千葉の豪雨など、各地で災害が相次ぎました。
何気なく過ごしている日常の風景が、決して当たり前のものではないことを、改めて感じます。俳句を詠める日々のありがたさをしみじみと思います。
今回は、昨年の12月以来、久しぶりのネット句会でした。22名の方々に、ご参加いただき、66句と揃いました。

<エール記>


〈 俳 話 少 々 〉

 芭蕉の大切な教えに「とりはやし」ということばがある。二者を仲介して上手に〈引き立たせる〉作業のこと。実例を以て説けば、森川許六の「十団子も小粒になりぬ秋の風」(韻塞・秋)で、二者とは「十団子」と「秋の風」。この二者を「小粒になりぬ」が〈引き立たせる〉役割を果たしている。「十団子」と「秋の風」の結びつきを注意深く観察して推測した結果で、ひかえめな主観といえるだろう。押しつけがましく、これ見よがしに述べても読者は得られない。忘れてはならぬ戒めだと思う。この俳論は2009年に拙稿「取合せの詩学」(『俳句の詩学・美学』俳句教養講座第二巻・角川学芸出版)で取り上げ、2024年1月には、片山由美子さんの依頼で彼女主宰の俳句雑誌『香雨』に「「とりはやし」考」と題して寄稿したが、読む機会のない人も多いと思って簡潔に繰り返してみた。

<海紅記>


〈 句 会 報 告 〉

 互選は三句投句、五句選の結果です。ただし、海紅選は五句を超える数を選んでいますので、互選の点数に含めてはおりません。
 また、海紅選の一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で仮名遣いを改めたものがあります。御了承ください。

<海紅記>


☆ 谷地海紅選 ☆
  ※予選本選の区別はありません。

バス停の夏の佐倉の木陰かな
《注》「佐倉の」という限定で詩になった。行ってみたくなる。
静枝
猛暑暮れ樹々の間に月の笑み
《注》「笑み」を言外に出せると更に上等。
美知子
波音を聞きつつ湯舟夏の月
《注》これ以上の「夏の月」はないでしょうね。
ちちろ
炎昼や赤子の足裏空を蹴り
《注》「赤子の匂いまで届きそうな生命力です。
つゆ草
日日草あの幼な子が塾通ひ
《注》「日日草」が中七以後によくなじんでいる。
エール
どろソース焦がす屋台の暑さかな
《注》夏の暑さを「屋台」でクローズアップさせたと読んだ。
真美
思ひ出の頁が開く遠花火
《注》何をしていても「思ひ出の頁」が開く年齢になりました。「遠花火」は一入です。
うらら
犬の耳風にはたはた夕夏野
《注》「犬の耳」は感情表現ツール。ここは涼しいと言っているのかな。
馨子
川風や草のにほひの花火席
《注》「草のにほひ」が花火見物を豊かなものにしています。
貴美
川遊びテントの中に蚊やり豚
《注》遊び疲れて戻る子たちを待つ「蚊やり豚」、優しい景色です。
つくし
旅も良し家もまた良し日日草
《注》これも「日日草」が効果的。
エール
潮風が煽る別府の蝉の声
《注》これも「別府」なる地名が効果的。しばらく九州に行ってないなあ。
真美
バス停に日傘が触れて会釈して
《注》こういうたしなみは日本文化の財産ですね。
梨花
夏服や袖に折り目のくつきりと
《注》洗濯後とか、おろし立てとか、涼しげで素敵です。
理恵子

☆ 互選結果 ☆

8 淡々と今日を仕舞へば月涼し 馨子
6 炎昼や赤子の足裏空を蹴り つゆ草
6 又吉をまた読む酷暑「生きとるわ」 月子
5 ふと途切れやがて無言に遠花火 正子
5 齢よりは元気といはれ村祭 宏美
4 五歳の子先頭を切る墓参かな 海紅
4 思ひ出の頁が開く遠花火 うらら
4 終活は小鳥来てから始めませう うらら
4 切れ長の秘仏の瞳闇涼し つゆ草
4 菩提寺の裏の静けさ蛍飛ぶ  宏美
4 旅も良し家もまた良し日日草 エール
3 向かひ風上へ下へと赤蜻蛉 エール
3 川風や草のにほひの花火席 貴美
3 紫陽花の名残会津の通り雨 真美
3 力瘤あるかもしれぬ蝸牛 千年
3 緑濃き渓谷の笹鮎売らる 由美
3 終戦忌いつも一人の疎開の子    梨花
2 波音を聞きつつ湯舟夏の月 ちちろ
2 氷山の一角崩すかき氷 つくし
2 川遊びテントの中に蚊やり豚 つくし
2 臥待ちや外湯巡りの駒の音 ひぐらし
2 愚痴聞きし昔懐かし墓洗ふ 海紅
2 饒舌と無口の夫婦苔を掃く 海紅
2 綿菓子を頬張る子らや大花火 貴美
2 デデムシも養老孟司の庭に棲む 月子
2 山脈も我が家の屋根も星月夜 宏美
2 どろソース焦がす屋台の暑さかな 真美
2 バス停に日傘が触れて会釈して  梨花
2 白シヤツのいつかのシミの薄れゆく 理恵子
1 海沿ひの湯宿で一献遠花火 ちちろ
1 子を寝かせ母と二人で蛍狩り つくし
1 月涼し遠くに聞こゆ跳ね太鼓 ひぐらし
1 背に負ふは大いなる空雲の峰 正子
1 蝉時雨常磐神社の旅巡る 京子
1 お座りの吾子と西瓜の背比べ 京子
1 バス停の夏の佐倉の木陰かな 静枝
1 汗みどろ衣類まる呑み洗濯機 美雪
1 「散歩よ」と友のスマホに蝉時雨 美知子


☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、青柳つくし、市川千年、今関理恵子、植田ひぐらし、宇田川うらら、大江月子、荻原貴美、尾見谷静枝、梶原真美、佐藤馨子、椎名美知子、谷 美雪、丹野宏美、田中正子、千葉ちちろ、西野由美、根本梨花、三木つゆ草、森田京子、谷地元eiko、村上エール(以上22名)

<以上取りまとめ、エール記>
< 了 >



このサイトについてサイトポリシー