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参考資料室
歌仙「雀のものがたり」のご紹介
谷地元 瑛子

昨年(2012)インターネットで、海外の方三人で巻いた英語歌仙(日本語訳版)を紹介したいと思います。この歌仙はその後、米国俳句協会のフロッグポンド誌(2012年秋号)に載りました。

歌仙:雀のものがたり            /訳 谷地元瑛子

    元日や晴れてすずめのものがたり              服部嵐雪
      翁につくる繭玉飾り                    瑛子
     とるものもとらず列車に飛び乗りて           ヴァレリア
      改札通る歌手はバリトン                 オリガ
     月の宴ふと香るティー湯気ながれ               ハナ
      床に活けたる菊の幻影                   瑛子
             *****              
     秋深む貯金箱中身減るばかり                 ハナ
      図書館の寂破りハークション             ヴァレリア
     恋の季節樋のシミさえロマンティック          ヴァレリア
      ドラゴンタトゥの娼婦派遣す               オリガ
     悶々とクロイツェルソナタ老作家               瑛子
      雪原茫漠月光蕭条                  ヴァレリア
     凍滝と御堂見守る山鴉                    ハナ
      傷みし板に聖人の顔                   オリガ
     どこからか今を生きよと聴こえ風               瑛子
      浜に凧あげ父となる人                   ハナ
     ふりそそぐ陽に咲き満てりアーモンド          ヴァレリア
      枝の鶯永き日を啼く                   オリガ
              *****
     極限にウィトニーヒューストン愛の歌            オリガ
      君の名知るは原爆前夜                   瑛子
     傘の下祖父母涙のキスのわけ              ハナ&瑛子
      白黒写真消えそうな文字               ヴァレリア
     水揺らし崩おれる影落雷す               ヴァレリア
      大青鷺の優美空へと                   オリガ
     バケツの墨吸いたる太筆着地せり               瑛子
      たばこ一服コックと教師                  ハナ
     ひくぴっく動いて子犬何の夢?             ヴァレリア
      自閉少年数をブツブツ                   瑛子
     赤き月スモッグぬけて昇りゆく               オリガ
      フレンチホルン虫の音の奥                オリガ
            **********
     鶏頭を露落ちる間に数えけり                オリガ
      しばしはここと探偵推理               ヴァレリア
     ローマ発つ前夜の会見ショートヘア              瑛子
      シャワーを浴びる庭のヴィーナス              ハナ
     ひらひらと花びら積もり一輪車                ハナ
      シャボン玉飛ぶ句集が映る                オリガ

     起首  2012年1月1日 満尾:同年3月8日 

     連衆  ・Hana Nestieva, Jerusalem, Israel
          ・Valeria Simonova-Cecon, Cividale del Friuli, Italy
          ・Origa. Okemos, Michigan
          ・谷地元瑛子
補筆
  フェイスブックの写真を見るとヴァレリアは颯爽とした現代っ子、結婚してロシアからイタリアに移り住み、元気に働く。ソフィア・ローレンの「ひまわり」という映画をつい思い出してしまうが、時代も背景も違う。日本語を習っていて、俳句、俳文、連句が大好き、わたしたち国際連句協会のアンソロジー「風の矢2」を購入、メールで熱心に質問を寄せるようになった。去年。是非歌仙を捌いてほしいと依頼され、とてもそれどころでなかった私は来年ならと答えたのだった。1月1日届いた初メールはイタリアの彼女からであった。ヴァレリアはロシア人の友人二人を招く。米国人と結婚して孫もいるオリガさんは墨絵の達人、日本を愛する事堅固!大変な勉強家でもある。モスクワから単身イスラエルに移民して人生を切り開いているハナさんは日本語学習歴がないと思っていた。けれど満尾後の『雑談』でハナのお父上はモスクワ大学の日本語学科を卒業していることがわかった。私も遠い上智大学ロシア語学科時代はなんとかロシア語で話し、手紙も書いのだが、ああ、すっかり錆びついていました。けれど此の作品、ひとりも英語ネイティフがいないにもかかわらず、米国俳句協会のフロッグポンド誌に採用され、2012年秋号に掲載されました。(連衆が喜んでいるので私もかなり嬉しいのです)    
以下、参考までに米国俳句協会のフロッグポンド誌(2012年秋号)に載りました原文を掲げます。                                谷地元瑛子