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論文を読む会のまとめ

・発表テーマ  「中川四明著『俳諧美学』と写生」
・発表者    根本文子
・日時     平成27年7月11日(土)、14時30分〜17時
・場所     東洋大学白山校舎6号館 谷地教授研究室
・資料     @レジメ「中川四明著『俳諧美学』と写生」(発表者作成)
・出席者    谷地快一、堀口希望、安居正浩、根本文子、小出山茶花、椎名美知子、鈴木松江、
          荒井奈津美、荻原貴美、伊藤無迅。
         <10名、敬称略>
・議事録作成  伊藤無迅(査閲;根本文子)

<発表のまとめ>
1.発表の概要
 中川四明は正岡子規を側面から支えた人物と言われている。今回はその著書『俳諧美学』を通して、子規が月並み打破のために主張した写生という句作法について考察する。
2.発表のポイント
・方法として子規没後四年目に出版された中川四明の『俳諧美学』を取り上げる。
・子規は西洋美学に学んだ西洋的芸術精神で、旧来の俳諧を新しい文学に改革しようと目論み、その切り札として写生という句法を提唱した。しかし、子規の生存中に写生概念が定着するまでには子規の思うようには至らなかった。このため世の日本派の俳人は子規亡き後、写生の概念把握を四明の『俳諧美学』に求めたと思われる。
・その理由は、子規の解説する西洋の美学理論やその用語は、新しく誕生する俳人にとって魅力的ではあるが、理解することは難しいという側面は否めない。「俳句をもってふりがなとなしたる」という四明の『俳諧美学』は、子規亡き後混迷する俳人にもう一度子規の主張に立ちかえって考えること、日本の文化である俳句のなかにも、すでに西洋と共通する美学が存在することを知らしめるものであったからである。 
・子規は予備門時代に真剣に西洋の審美学を学ぼうとしたが、余命を悟り断念した経緯がある。子規は二五年十二月、日本新聞社に入社。「獺祭書屋俳話」等を書いて俳句に邁進する。子規の俳論を『俳諧美学』に求めこれを考察する 。
・『俳諧美学』に見る四明の写生論。  
  ・『俳諧美学』は、「誘引」「官覚」「形式」「本體」「交感」「醜其他」「壮美崇高」「葛藤」「悲壮」「滑稽」の十章から構成される。
  ・「官覚」では、素堂の句を引用し所謂五感(視覚、聴覚、味覚、臭覚、触角)を上げ、視覚、聴覚を高級官能とし、イメージの再現容易性を上げている。
  ・しかし、イメージ再現性だけでは芸術にならない。そこに工夫を巡らした創造性と組み立て力が無ければ芸術の理想には行きつかない。
  ・芸術の理想美とは論争の余地のない真理に相当し言わば「神のごとし」、これに対し現存する個体美(性格美)は「人のごとし」と言える。        
3.まとめ
質問や議論が大いに交わされ、久し振りに盛り上がった会となった。盛り上がった分だけ時間が足りなくなり、進捗は準備した資料の中ほどで終わった。
次回は、今回議論できなかった「子規の月並み打破と写生」について、再度機会を得てお願いすることになった。 (了)