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論文を読む会のまとめ

・発表テーマ  『去来抄』論―卒業論文に向けた調査報告―
・発表者    荒井奈津美
・日時     平成26年11月15日(土)  14時30分より16時30分
・場所     東洋大学白山校舎6号館 谷地快一研究室
・議事録    伊藤無迅

<発表のまとめ>

1.発表内容
   冬牡丹 千鳥よ 雪のほととぎす
      『野ざらし紀行』(著:松尾芭蕉)より
『野ざらし紀行』の一句である。この句はほとんど季語で成立っているといっても過言ではない。
近現代俳句では一句に複数の季語を入れる季重なりはよくないとされている。
蕉門ではどのように捉えていたのか。蕉風俳諧の教えを知るための一冊として『去来抄』を読みとく。

2.発表のポイント
@向井去来とはどのような人物であったのか
A『去来抄』概要
B今後も探求したい課題

3.まとめ
向井去来は芭蕉に「洛陽に去来ありて、鎮西に俳諧奉行なり」(西国三十三ヶ国の俳諧奉行)と称えられる程、師弟の信頼関係は深かった。
『去来抄』は蕉風俳諧の教えを知るための手掛かりとなる俳論書の一冊である。
「先師評」「同門評」「故實」「修行教」の四巻二冊が草稿のまま実弟魯町のもとに伝わる。
去来没後七十年後に加藤暁臺(台)<序>、井上士朗(跋)によって京都井筒屋より出版「故實」を除く三巻三冊として刊行。
【先師評】
芭蕉または門人同士の評論を収録。句作の機微に触れる話が多く、等類・余白の美・句の姿・俳席の心得など多方面にわたる。概ね発句に関する俳話、その後は付句に関して述べている。
句作において自らの句を反面教師としているが、評論においては自画自賛している。
【同門評】
芭蕉や門人の句を門人同士が批評する論議。付句に関するものが一か所ある以外は、全て発句に関する内容である。許六との論議が最も多い。また去来の『旅寝論』での論争を基にした俳諧談義が記さ
れる箇所も見受けられる。
【故實】
卯七(蓑田卯七)が問い、去来が答える形で俳諧の法式・脇第三の留め・切字・花の座などの故實について芭蕉の真意を論じている。発句や付句に関するものや、俳文・俳号・俳書にも触れている。
【修行教】
不易流行・さび・しをり・細みなど蕉風俳諧本質の論説。
また匂い付け・移り・響き・俤などの技法を述べている。俳諧の歴史や連句の変遷についても触れ、修行の具体的な心得を論ずる。冒頭は不易流行に関して説き、次いで修行での心得、技法、発句の善し悪しや付句との違いに触れている。

今後の課題として『三冊子』『俳諧問答』『風俗文選』もあわせて読み解く必要あり。

4.参加者からのコメント
  ・卒論テーマとするには、焦点をもう少し絞ることが必要か。(季重なり?/蕉風?/『去来抄』?)
   →それぞれのテーマが重みを持っており、掘り下げに困難さが予想されるため。
  ・もし「芭蕉の季重なり観」とするなら、『去来抄』だけではなく『三冊子』『俳諧問答』
   『風俗文選』等も併せて読み解く必要がある。
  ・また、近・現代俳句の季重なり観との対比視点も大事か。
                                                        
以上