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子規顔の出されぬ格子哉
野坡(炭俵)

句意は「ほととぎすの声が聞こえた。姿を見たくて急いで覗こうとしたのだが、窓の格子に邪魔されて顔を出して見ることが出来ない」
野坡は芭蕉の晩年に活躍した弟子。越後屋両替店の番頭であった。元禄7年刊の『炭俵』の撰者の一人。芭蕉の「軽み」の風を継いだと言われる。芭蕉の死後難波へ移住。職業的俳諧師として九州などを行脚し蕉風俳諧の普及につとめた。
掲出句も平明で俳味があり、「軽み」の一句と見ていいだろう。普通に解釈すれば句意は上記のようになると思うのだが、「格子」という言葉を『江戸語辞典』(東京堂出版)では、「吉原の遊女屋の表に面した所の格子」と限定されている。こうなると作者は遊郭にいることになり、色っぽい句に様変わりする。
後者の方が面白さは倍加すると私は思うのだが、さて・・・。時代の違う句を味わうのは中々難しい。            

(文) 安居正浩
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