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納豆きる音しばしまて鉢叩
芭蕉 (韻塞・冬・元禄三)
納豆を刻むのを待ってくれ、鉢叩(はちたたき)をしばらく聞こうではないか、の意。この納豆は一般的な糸引き納豆で、「納豆きる音」は納豆汁にするために、すり鉢で豆腐や野菜などと味噌汁をすりあわせる音であろう。それを鍋に入れて煮立てたのが納豆汁で、『初学抄』(寛永18)以降の歳時記類に見える。「鉢叩」は空也念仏のことで、十一月十三日の空也忌から大晦日まで、半僧半俗の空也僧が竹の杖で瓢を叩き、鉦を鳴らし、念仏・和讃を唱えて洛中洛外をめぐり喜捨を受けた。そのからびた音に、京都の寒夜の風物詩を見届けた句である。
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