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鱈船や比良より北は雪げしき
李由(韻塞)

句意は「琵琶湖を走る鱈船が見える。比良山より北の方はもう雪景色だ」
李由は芭蕉の弟子で、滋賀県彦根市の明照寺(めんしょうじ)の住職。同じ弟子の彦根藩士森川許六と仲が良かった。二人には一緒に編んだ『韻塞』『篇突』などがある。
比良につながる山々の雪景色の中、日本海の鱈を乗せた船が琵琶湖を南下している。景が大きく絵画風で印象的な句である。古くから日本海の海産物は福井県の敦賀などから陸路、琵琶湖に運ばれ湖上輸送で京阪神に輸送されていた。そんな情景を詠んだものであるが、句の成立した元禄頃には別の海上ル―トが出来て、湖上ル―トはすたれていたようである。
この句は『俳諧問答』に、「比良より北は雪げしき」の上五に悩んでいる李由をみかねた許六が芭蕉に相談したところすぐに「鱈船や」と据えられたと紹介されている。
連句が盛んで連衆意識の強かった江戸時代には、いい作品を作るためには現代より素直に師や仲間に相談できる雰囲気があったのかもしれない。                                          

(文) 安居正浩
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