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兼題解説 七夕・冷やか

七夕(たなばた)
〔本意・形状〕 陰暦七月七日の夕方の意で五節句の一つ。ちなみに五節句は次の五つ。正月七日(人日)・三月三日(上巳)・五月五日(端午)・七月七日(七夕)・九月九日(重陽)。
〔季題の歴史〕 七月七日、この日天の川を挟んで会う牽牛星(鷲座の主星アルタイル)と織姫星(琴座の主星ベガ)を祀る古代中国の伝説に基づく行事に、裁縫や習字の上達を願う色々の行事や伝説が加わり、これ等に日本古来の「棚機(たなばた)つ女(め)」の伝説や禊(みそぎ)の行事が合わさって、奈良時代以降の主要な宮廷行事となった。
現在、一般には六日の夕方に笹竹を立てて願意を書いた短冊で飾り付け、七日または八日の朝に川や海に流す(七夕流し)。
〔例句〕 ・自転車に七夕竹と子を二人     星野恒彦
  ・えらばれて七夕の竹伐られけり   斉藤史子
  ・星今宵瞼の母となりにけり      本田由生恵
(堀口希望)

冷やか(ひややか)
〔本意・形状〕 秋になってふと肌に感じる、冷やかさで、板の間や公園のベンチなどに触れたときに実感される。初秋の季語ではあるが、「新涼」よりはもう少し秋が進んだ感じがする。芭蕉の〈ひやひやと壁をふまえて昼寝かな〉、 一茶の〈よりかかる度に冷つく柱かな〉などが、よく実感を捉えている。
〔季題の歴史〕 連『連珠合壁集』(文明八)に「ひややかなる(風水など)」として秋に初出。連『至宝抄』(天正一三)『花火草』(寛永一三)以下に七月。ただし、歳時記によって異なるものもある。
〔類題・傍題〕 ひゆる ひやひや 下冷 秋冷 朝冷 雨びえ
〔例句〕 ・紫陽花に秋冷いたる信濃かな   杉田久女
  ・冷かに壺をおきたり何も挿さず   安住敦
  ・秋冷の黒牛に幹直立す       飯田龍太
  ・ひやひやと積木が上に海見ゆる  河東碧梧桐
  ・冷やかに海を薄めるまで降るか  楷未知子
(根本文子)