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兼題解説 桃の花・四月馬鹿

桃の花(もものはな)
〔本意・形状〕 バラ科の落葉樹。中国黄河上流原産であるが、弥生時代に日本に渡来した。中国では花といえば桃の花をいう。日本の文人も唐風に倣って桃の花を珍重した。桃は雛祭の花でもある。しかし明治の改暦により旧暦の3月3日と新暦の3月3日に差が生じてしまい、今や花屋の店頭でなければ雛祭の日に桃の花を見ることができない。
〔類題・傍題〕 白桃・緋桃・枝垂桃・西王母・桃の村・その他関連季語多い。
〔例句〕 ・戸の開てあれど留守なり桃の花       千代女
  ・商人を吼ゆる犬ありももの花         蕪村
  ・葛飾や桃の籬も水田べり           水原秋櫻子
  ・うたた寝のわれも杜子春桃の花       森澄雄 
(堀口希望)

四月馬鹿(しがつばか)
〔本意・形状〕 四月一日には嘘をついたり、人をかついだりしても良いとして楽しむ風習。西洋から入った。エイプリルフール・デイ、オールフールズ・デイといいその訳語で万愚節とも言う。具体的には騙された人のことを言う。
西洋の古い暦では、三月二十五日が新年で、春分の祭りが四月一日まで行われた。この最後の四月一日は贈り物交換の日で、その古い習慣の名残とも言われる。
〔季題の歴史〕 西洋の習俗の他に東洋起源節もある。インドの仏教徒が春分に菩薩の行と称する苦行に服する。そして、四月一日から凡俗の生活に戻るのを諷し、揶揄節(やゆせつ)と呼んだのがはじめだとも言う。
『新俳句類選』(大島宝水選・明治39)に、「俳諧は滑稽によろし四月馬鹿 知十」、「花束に贈名かくし四月馬鹿 白菊女」を所出。
〔類題・傍題〕 万愚節 エイプリル・フール
〔例句〕 ・万愚節半日あまし三鬼逝く       石田波郷
  ・乳児検診しりのえくぼや四月馬鹿   細谷喨々
  ・人間に尾の残りたる万愚節       角川春樹
  ・大雪となりしはまこと四月馬鹿     原田青児
  ・誤字を見て正字の書けず万愚節    大橋敦子
(根本文子)