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兼題解説 山眠る・風呂吹き

山眠る(やまねむる)
〔本意・形状〕 春の山は山笑う、秋の山は山粧うと云うが、冬の山を同じように擬人法で「山眠る」という。落ち葉した冬日のなかにこんもりと眠るような山の姿をいう。
〔季題の歴史〕 『小づち』(明和七)に十月、『改正月令博物筌』(文化五)『手勝手』(文化七)以下に兼三冬として所出。「臥遊録」に、冬山について「冬の山はものさびしうて、しずまつたこころなり」と訳している。また、「山笑ふ」「山粧ふ」「山眠る」の三つを季語に用いて、夏の「山滴る」を季語に用いないのは「俳の掟」だとしている。
〔類題・傍題〕 眠る山
  ・眠る山或日は富士を重ねけり    水原秋桜子
  ・山眠る如く机にもたれけり      高浜虚子
  ・安房上総山が眠れば海が吠え   鈴木真砂女
  ・ひとりいる時はよく見え山眠る    鈴木六林男
  ・山眠る夕日の溜りをふやし      村越化石
(根本文子)

風呂吹(ふろふき)
〔本意・形状〕 大根や蕪を茹でて、熱い物をふうふう吹きながら食べるので風呂吹き。冬になって水分の増した太めの大根を厚めに切って皮をむき、面取りして、昆布を敷いた鍋に米を少々入れ、たっぷりの水で茹でる。柚子味噌、胡麻味噌などをかけて食べる。冬の醍醐味である。
〔季題の歴史〕 『寄垣諸抄大成』(元禄8)に11月、『通俗誌』(享保元)『年波草』(天明3)などに兼三冬、『袖かがみ』(延享元)『小づち』(明和7)に10月として所出。『料理綱目調味抄』(享保15)に、大根「風呂吹は、切つて釜に縦に詰めて、大根を卸して間々へ入れ、すなはち茹で汁とす。醤油・葛入れ、また、あんか、味噌もよし」。
正岡子規は明治30年12月24日(旧暦12月1日)、子規庵で第一回の蕪村忌を行う。この時大阪の石井露石から送られた天王寺蕪で風呂吹がもてなされた。以後蕪村忌は風呂吹とともに例年の行事となった。
〔類題・傍題〕 風呂吹大根
  ・風呂吹の一切れづづや四十人      正岡子規
  ・風呂吹の味ひ古詩に似たるかな     永田青嵐
  ・風呂吹や妻の髪にもしろきもの      軽部鳥頭子
(根本文子)