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兼題解説 添水・良夜

添水(そうず)
〔本意・形状〕 稲・野菜・果実などの農作物を荒らす鳥獣を追い払うために、水の力で音を出す仕掛け。竹の中央に支点を置き、片方に水を引き、水が溜まると重みで傾いて水が流れ出す。竹は軽くなって跳ね返り、一端が下に置いた石や金属を強く打って音を出す。鳥獣は驚いて退散するという仕掛けである。
庭園の遣水に仕掛けて、風流を楽しむ場合もある。僧都・ばったんこともいう。季節は三秋。
〔例句〕 ・ばったんこ水余さずに吐きにけり      茨木和生
  ・山の刻ゆつくり流れ添水鳴る        吉年虹二
  ・石庭の黙のいよいよ遠添水         亀井糸遊
(堀口希望)

良夜(りようや・りやうや)
〔本意・形状〕 月の美しい夜のことをいい、主として仲秋の名月、十五夜をさす。
『後赤壁賦』に「月白く風清し。この良夜をいかんせん」とある。
〔季題の歴史〕 『徒然草』に「八月十五日、九月十三日は婁宿(ろうしゅく)なり。この宿、清明なるゆゑに、月を翫(もてあそ)ぶに良夜とす」とある。
かつて子供達は「影踏み」などをして遊んだ。
〔類題・傍題〕 良宵(りようしよう)佳宵(かしよう)
  ・我が庭の良夜の薄湧く如し      松本たかし
  ・どの家もまだ起きてゐる良夜かな  宮田重雄
  ・蓮の中羽搏つものある良夜かな   水原秋桜子
  ・鰹木のふとぶととある良夜かな    西島あさ子
  ・いのち惜しかかる良夜のありとせば 中村苑子
(根本文子)