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兼題解説 甘酒・風鈴

甘酒(あまざけ)
〔本意・形状〕 糯米の粥に麹を加え、6〜7時間発酵させて造る酒。酒といってもアルコール分は殆どない。暑いときに飲むとかえって暑さを忘れさせてくれるということで、夏(三夏)の季語とする。
〔季題の歴史〕 江戸時代には真鍮の甘酒釜を据えた箱を背負い町中を売り歩いた。
〔類題・傍題〕 一夜酒(ひとよざけ)。甘酒売。甘酒屋。
  ・御仏に昼供へけりひと夜酒        蕪村
  ・甘酒屋打出の浜におろしけり      松瀬青々
  ・甘酒吹くしばし前山眩みて        牧百合子
(堀口希望)

風鈴(ふうりん)
〔本意・形状〕 ガラス、陶器、金属、などの他に、鉄製の南部風論などもある。風に鳴る美しい音色は夏座敷に涼を添える風物詩である。最近の冷房器具の発達で見たり聞いたりする事が少くなったのが残念である。
〔季題の歴史〕 鎌倉時代に中国から伝来したことが書物に見える。室町時代に上流社会で流行し始めたようで、茶室の軒につるされたりしている。江戸時代からは釣忍(つりしのぶ)につけて軒端に下げることが庶民の生活に流行した。
江戸の風物詩であった風鈴売りは姿を消したが、現在でもデパートや縁日などで売られ、美しい音色が懐かしい。
〔類題・傍題〕 風鈴売り
  ・風鈴や花にはつらき風ながら      蕪村
  ・風鈴や日暮れは生きてゐるかぎり   小檜山繁子
  ・兄の吊る母の風鈴鳴りにけり      黒田杏子
  ・風鈴に白波寄せてゐたりけり      大串章
  ・風鈴買ひ一つの音を提げ歩く      吉川禮子
(根本文子)