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兼題解説 一葉忌・鯛焼き

一葉忌(いちようき)
〔本意・形状〕 小説家・樋口一葉の忌日。11月23日。『うもれ木』『大つごもり』      
『にごりゑ』『十三夜』『たけくらべ』などを書いた。明治29年、24歳で没。肖像は五千円札で親しい。    
〔類題・傍題〕 特になし
  ・借りし本返さで古りぬ一葉忌         西村和子
  ・指添へてとぎ汁こぼす一葉忌        八染藍子
  ・葉牡丹の芯のくれなゐ一葉忌        岡本正敏
  ・戸袋に何の明るさ一葉忌           安居正浩
(堀口希望)

鯛焼(たいやき・たひやき)
〔本意・形状〕 「鯛焼」・「今川焼」は季題としては新しく、珍しいものであろう。
『角川俳句大歳時記』に見えるが、『図説俳句大歳時記』をはじめとして立項されていない歳時記が多いと思われる。「鯛焼」は一年中売られているが、紙袋に入れられて、しっとりと温かい感触は冬にこそ、嬉しく、懐かしく感じられる。
作り方は鉄製の鯛の焼き型に、小麦粉をといた生地を流し、小豆餡を包んで焼いたもの。鯛の形がおめでたい。食べるとき、頭からか尻尾からかとか、餡が尻尾のどこまで入っているかなどと、子供達が楽しく、賑やかに食べていた。
〔季題の歴史〕 季題として立項されてはいなかったが、「鯛焼」のルーツともいうべき「今川焼」は、江戸の神田今川橋辺の店で売り始めたと言われる。昔は銅板に銅の丸い輪型をおいてその中で焼いていた。
〔類題・傍題〕 特になし
  ・幕あひや鯛焼とどく楽屋口      水原秋桜子
  ・鯛焼を徹頭徹尾食ひ尽くす      相生垣瓜人
  ・四谷にて鯛焼を買ふ出来ごころ   能村登四郎
  ・鯛焼を割つて五臓を吹きにけり   中原道夫
  ・鯛焼や膝折つて子と頒ち合ひ    福本啓介
(根本文子)