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兼題解説 嫁が君スケート

嫁が君(よめがきみ)
〔本意・形状〕 正月三が日の鼠の異称で、忌み言葉。鼠は農作物を荒らし、食料を食ってしまう有害な動物であるが、一方では大黒様のお使いとも言われており、何かしらの神霊があるとも考えられ忌むものとされたのであろう。
〔季題の歴史〕 習俗として古いものと思われる。去来の俳論書『旅寝論』にも取り上げられており、俳諧には馴染みの深い季題である。
〔例句〕 ・明くる夜もほのかに嬉しよめが君  其角
  ・美しき障子明りや嫁が君       加古宗也
  ・嫁が君戦知るひと減りにけり    根岸善雄
  ・嫁ヶ君髭ふるはせて走りけり    沖崎一考
(堀口希望)

 

スケート
〔本意・形状〕 スケ―トは本来氷上を滑る道具の名称であるが、スケ―ティング(氷滑りをすること)にもいわれる。俳句ではおもにこのスケ―ティイングを言う場合が多い。スケ―トはスキ―と並んで大きな冬のスポ―ツで、種目はスピ―ド、フィギュア、アイスホッケ―の三種がある。最近では日本が国際的にも最高レベルにある華やかなフィギュアスケ―トが注目を浴び、羽生選手や浅田選手の活躍が日本中を明るくしてくれている。
〔季題の歴史〕 スケ―トの起源は古く、冬季の湖沼の交通手段として石器時代からあり、そのころの動物の骨で作った物が遺物として残っている。12世期に入って鉄製の物が現れた。日本にスケ―トが入ってきたのは明治10年(1877)で、当時の札幌農学校(現 北海道大学)のアメリカ人教師ブルックがもってきた。明治38年(1905)に中央本線が開通すると、諏訪湖が絶好のスケ―ト場として脚光をあび、スケ―トが発展する。そして諏訪湖一周スケ―トの会も開かれたが、この頃でもまだ日本では下駄の下に竹を打ち付けた下駄スケ―トの競争であった。大正2年に日本スケ―ト会が誕生し、その後国際スケ―ト連盟に加盟して今日に至っている。
〔類題・傍題〕 氷滑(こおりすべり)、スケ―ト場、スケ―タ―。
  ・スケ―トの紐むすぶ間も逸りつつ    山口誓子
  ・スケ―トの左廻りや山囲む        松本たかし
  ・スケ―タ―五色の蜘蛛の散るごとし  石塚友二
  ・スケ―トの濡れ刃携へ人妻よ      鷹羽狩行
  ・スケ―トの汗ばみし顔なほ周る     橋本多佳子
(根本文子)