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兼題解説 桜・雛納め

桜(さくら)
〔本意・形状〕 バラ科サクラ属の落葉高木の総称で、日本の国花である。晩春、白やうす紅の花がほのぼのと山野を染める。花は五弁の一重が多いが八重もある。山桜のような自生のものも、染井吉野のような人工種もある。冬桜などの冬に咲くものもあるが、俳諧・俳句の季語としてはただ「桜」といえば晩春である。なお、ただ「花」といえば桜をいう。この季語については多言を要しないであろう。
〔季題の歴史〕 すでに万葉の時代から愛され、「見渡せば春日の野辺に霞立ち咲き匂へるは桜花かも」の歌がある。
〔類題・傍題〕 若桜・老桜・朝桜・夕桜・夜桜・山桜・里桜・染井吉野・楊貴妃桜・大島桜、 その他多い。
  ・命二つの中に生きたる桜かな    芭蕉
  ・夕桜家ある人はとくかへる     一茶
  ・観音の大悲の桜咲きにけり     正岡子規
  ・ひらく書の第一課桜濃かりけり   能村登四郎
  ・夜桜やうらわかき月本郷に     石田波郷
  ・そして人忘れられゆく桜かな    都甲龍生
(堀口希望)

 

雛納め(ひなおさめ・ひなをさめ)
〔本意・形状〕 雛祭りに飾った雛をしまうこと。飾り付けた日から奇数に当たる日を選ぶ。祭りのあと早くしまわないと、縁遠くなるという言い伝えもある。雛の顔をやわらかい吉野紙などで包み、箱の中にはしょうのうを入れる。雛が見えなくなるのはさびしいものである。
〔季題の歴史〕 明和年間(1764―71)の川柳に「樟脳に包んで置いて蕎麦をくひ」と、雛納めを詠んだ句がある。雛をしまうときには蕎麦を供え、人々も一緒に食べた。
  ・あたゝかき雨夜の雛を納めけり    西島麦南
  ・わが膝に立ちたまふなれ納雛     阿波野青畝
  ・仕舞われる顔を並べて雛かな     北 山河
  ・老妻のひゝなをさめも一人にて    山口青邨
  ・怠るに似て延ばしをり雛納め     岩城のり子
(根本文子)