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兼題解説 神無月・大根引

神無月(かんなづき)
〔本意・形状〕 旧暦十月の異称。この月に諸国の八百万(やおよろず)の神々が出雲に集まって縁結びの相談をする、という俗信によってこのようにいう。諸国の神が参集する出雲では逆に「神在月(かみありづき)」といっている。
〔季題の歴史〕 すでに万葉集に「十月(かんなづき)しぐれに逢へる黄葉(もみぢば)の…」とあり、言葉の歴史は古い。『徒然草』二百二段では上記の説には根拠がないと批判している。
〔類題・傍題〕 神去月(かみさりづき) 神在月 時雨月 初霜月
  ・けふよりやいろ葉散りぬる神無月  貞室
  ・禅寺の松の落葉や神無月      凡兆
  ・巫女舞の稽古の日々や神無月   岩城鹿水
  ・神在の出雲より蕎麦とどきけり   酒本八重
(堀口希望)

 

大根引(だいこんひき・だいこひき)
〔本意・形状〕 俳句では語呂のうえから普通(だいこひき)と言う。11月ごろからはじまる大根の収穫作業である。関東では関東ロームの柔らかい赤土に 栽培されるので、葉の根本をつかんでそのまま引き抜くことができる。
〔季題の歴史〕 『初学抄』(寛永18)、『毛吹草』(正保2)以下に10月として所出。
〔類題・傍題〕 だいこ引、大根引く。
  ・大根引大根で道を教へけり        一茶
  ・たらたらと日が真赤ぞよ大根引      川端茅舎
  ・大根引く瑞巌禅寺目の下に        遠藤梧逸
  ・暮れぬとて声かはすなり大根引      太祗
  ・引きすすむ大根の葉のあらしかな     白雄
(根本文子)