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兼題解説 更衣・母の日・桐の花

更衣(ころもがえ)
〔本意・形状〕 陰暦4月1日をもって冬春ものの衣服を夏向きのものに変えること。はじめ宮中行事、のち民間に広まる。現代では地方・気象状況などによって適宜変更しているが、学校などで制服の決まっている場合は、6月1日をもって変えるところが多いようである。いずれにしても、夏らしい衣服に変えることは、本人にとっても周囲の者にとっても軽快な気分になるものである。季節は初夏。
〔季題の歴史〕 すでに『和漢朗詠集』『夫木和歌抄』等に題(夏)として出ている。
〔類題・傍題〕 衣更う
  ・長持に春ぞ暮れ行く更衣      井原西鶴
  ・一つ脱いで後に負ひぬ更衣     松尾芭蕉
  ・現し世を日々大切に更衣      星野立子
  ・卒寿にもいささかの夢更衣     保津操
  ・駅員のひらり柵越ゆ更衣      和気みゆき
(堀口希望)

 

母の日(ははのひ)
〔本意・形状〕 五月の第二日曜日。母に感謝する日。
カーネーションの花を、母のいる者は赤、亡き母をしのぶ者は白を胸につけていたが、現在は赤いカーネーションを母親に贈るのが一般的。
赤いカーネーションの花言葉は「母への愛」(初夏)
〔季題の歴史〕 もとはアメリカの教会の行事。1914年にウイルソン大統領により、母の日が制定されたと言われる。
〔分類〕 行事
  ・母の日が母の日傘の中にある  有馬朗人
  ・母の日の目がしら痒き計りごと  北川英子
  ・母の日の花の荷が着く男子校  林翔
  ・落葉掃く父なきあとの母の日々  深見けん二
  ・母の日や何もせずとも母とゐて  大橋敦子
(安居正浩)

桐の花(きりのはな)
〔本意・形状〕 高さ10メートルにも達するゴマノハグサ科の落葉高木。五月頃、紫色の花が円錐花序となって下向きに沢山咲く。芳香がある。その淡い色合いが、近くに咲いていても何となく遠くに感じられ、はかない印象がある。
〔季題の歴史〕 桐は新古今集頃から詠まれているが、その殆どが葉を詠んだものである。「桐の葉も踏みわけがたくなりにけりかならず人を待つとなければ」(式子内親王)。『初学抄』(寛永18)、『毛吹草』(正保2)、『増山の井』(寛文3)以下に四月として所出。
〔類題・別名〕 花桐
  ・青空のなき日も見上げ桐の花     稲畑汀子
  ・花桐に真夜の狭霧の流れけり     石橋秀野
  ・伊賀越は物語めけり桐の花      永田青嵐
  ・桐の花北国の空いつも支ふ      細見綾子
  ・桐の花日暮れと知って咲いてをり   大串章
(根本文子)