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兼題解説 凍鶴・竜の玉・雪間

凍鶴(いてづる)
〔本意・形状〕

冬の鶴が首を翼の中に挟み、凍てついたように寂然と片足で立っている様子。鶴は優美な姿であるので、凍鶴にもどことなく品位を感ずる。三冬に使う。

〔場所〕 冬の田野・庭園・動物園など。
〔季題の歴史〕 「霜の鶴」は古く平安時代の和歌に見える。俳諧書では『俳諧をだま綱目』(元禄10・竹亭)に冬として、また『俳諧歳時記栞草』(嘉永4・馬琴)に兼三冬として所出。
〔別名〕 霜の鶴・霜夜の鶴・鶴凍つ
  ・凍鶴のやをら片足下しけり        高野素十
  ・去年の鶴去年のところに凍てにけり  水原秋桜子
  ・凍鶴の双眸かたく閉ぢゐたり      日比野さき枝
  ・凍鶴の立つ一脚のおもひかな      樋口英子
  ・凍鶴の身の透くまでに立ちつくす    長田等
(堀口希望)

 

竜の玉(りゅうのたま)
〔本意・形状〕

ゆり科の多年草。夏に糸状の葉の間から、花茎を伸ばし、淡い紫色や白色の小さな花を咲かせる。晩秋から冬にかけて、堅くて弾力のある青い実をつける。(三冬)

〔場所〕 庭・公園・林など
〔別名〕 蛇の髯の実・竜の髯の実・はずみ玉
〔分類〕 植物
  ・竜の玉深く蔵すといふことを      高浜虚子
  ・空の日の曇ればくもる竜の玉     鈴木しげを
  ・龍の玉叱られし子のしやがみ泣き  伊藤真代
  ・深酒のそのあくる日の龍の玉     梅村すみを
  ・わだつみの色より碧し龍の玉     宇田零雨
(安居正浩)

雪間(ゆきま)
〔本意・形状〕

冬に積もっていた雪が春になって解け出すと、ところどころに土が見えるようになる。この雪の隙間、またそこに見える土をいう。そしてその土に萌え出る草を雪間草という。雪国の人々が待ちわびた春、土を踏む喜び、雪間は雪国の春を象徴する季語である。

〔季題の歴史〕 『至宝抄』(天正十三)、『御傘』(慶安四)以降に一月として所出。『御傘』、『温故日録』(延宝四)に「雪の隙」を所出。
〔別名〕 雪のひま、雪の絶間、雪間草
  ・雉子立てりきらきらきらと一雪間      大野林火
  ・四五枚の田の展けたる雪間かな      高野素十
  ・長靴につくづく倦みぬ雪間草        福永耕二
  ・越の子に唄が湧き出づ雪間萌       加藤知世子
  ・古庭の雪間をはしる鼬かな         正岡子規
(根本文子)