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兼題解説

なめこ
〔本意・形状〕

モエギタケ科の食用茸。晩秋から冬の間、主としてブナの切り株や倒木の朽ちかかったところに叢生する。傘の表面は無毛で、黄褐色または栗色、粘性が強い。傘の開かない小粒のものを上等品とし、豆腐とともに味噌汁にしたり(なめこ汁)、おろし和えなどにし、ぬめりや歯ざわりを楽しむ。主たる産地は東北地方。おがくず栽培も行われる。

〔場所〕 山野・栽培農場・八百屋・台所・食卓
〔季題の歴史〕 『図説俳句大歳時記』(角川書店)・『角川俳句大歳時記』・その他の歳時記にあたったが、季語の考証に触れているものはなく、例句も現代俳句のみであった。
思うに、古くから食用とされてきたが、最近まで季語としては認識されなかったのではなかろうか。
〔別名・傍題〕 なめたけ・ふゆたけ・なめこ汁
  ・霧さむき月山なめこ食ひ惜しむ         加藤 楸邨
  ・なめこ掻く林中の声四重唱            殿村菟絲子
  ・遅れ来てすぐに出されし滑子汁         町田まさ子
(堀口希望)

 

囮(おとり)
〔本意・形状〕 小鳥を網などで捕らえるため、姿や鳴き声でおびき寄せるための小鳥。現在は狩猟法で制限されているので、余り行われていない。生きた鳥のほか剥製や木彫りのものが使われることもある。(晩秋)
〔場所〕 野山
〔季題の歴史〕 招鳥(おきとり)の略という説あり。『俳諧歳時記』(享和三年)に所出。
〔別名・傍題〕 媒鳥(おとり・ばいちょう)・囮番・囮守・囮籠
〔分類〕 生活
  ・はるばると山に向へる囮かな        中村汀女
  ・峠路のいづこか鳴ける囮かな        水原秋櫻子
  ・天翔る群に応へて囮かな           浅井啼魚
  ・啼き出して囮たること忘れゐむ       木附沢麦青
  ・掛けしより木の影躍る囮籠          高浜虚子
(安居正浩)

 

木の葉髪(このはがみ)
〔本意・形状〕 髪の毛は一年中変わりなく抜け替わるが、「十月の木の葉髪〕とも言われるように、秋から冬にかけて意識することが多くなる。冬の抜け毛を落葉にたとえて言うもので、季節感とあいまって淋しさ、侘びしさが感じられる。
〔季題の歴史〕 古い例句が見あたらないので明治以降の季題かと思われる。
  ・櫛の歯をこぼれてかなし木の葉髪     高浜虚子
  ・木の葉髪背き育つ子なほ愛す        大野林火
  ・出稼ぎのいつまで続く木の葉髪       菅原野火男
  ・木の葉髪せめて眸は明らかに        西島麦南
  ・木の葉髪いつか身に添ふ旅鞄        黒田杏子
(根本文子)