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私の好きな私の一句 ― 会員紹介にかえて ―

◆ 自分を語るということ 椎名美知子

人生には立ち止まって振り返る時間が所々に準備されているようで、私は今そんな時間をいただいているようです。
  谷地先生がブログで「安居(あんご)」のことを書かれておられましたが、この世に雨季のある意味、雨季における身の処し方を知り、大事に過ごすことが次の実りをもたらすということを感じとっています。雨季ほどおおげさなことではないのですが、いま私も久しぶりにゆるやかな時間を与えられて過ごしています。
  自作の好きな句と、自己紹介という提案ですが、私の場合は俳句歴も浅く、どの場面を切り取っても、結構コントラストが強く下手な句ばかりです。でもそれらの句にも、あれやこれと思いがこめられていて捨てがたく、苦笑しています。俳句はたったの十七文字で、しかもいつまでも鮮やかに「その時」を思い出させてくれて、すばらしいと改めて思います。
  自分の歩んできた道を振り返ると、不思議と今までに出会った師や友人の、語られていない、あるいはその人しかわからない、見えないものについて考えてしまいます。本当にはわかろうはずもないのに、それでもおろそかに出来ないと、その人一人ひとりの人生をいとおしく思います。
  きっと私のように、自分のどの部分を紹介しようかと迷っている方も多いのではないでしょうか。となれば、思いつくままに書いていいのかもしれませんね。何度書いてもいいのですから。

  初紅葉孤高をかこちここにあり   美知子

 数年前に思いもかけず入院し、高層の病室の窓から常緑樹の林に一本の紅葉を発見して、その潔さに元気づけられました。時々あの紅葉を思い出します。でも、自分を語るというのはやはり、ちょっと恥ずかしいものですね。(2006/10)

写真提供:高橋巧 氏



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