| ためらひつ郷にしたがふ寒さかな |
妻の風邪息子厨に何刻む |
| 旧姓の母の賞状一葉忌 |
一病を持ちたるほどの煤払 |
| 離れ住む母の霜夜の電話かな |
枯園の少年何を断てざるや |
| 枯枝を焚けば幼き日の匂ひ |
ふるさとに残りし母や夕時雨 |
| 爪を切るそれのみの音枯木宿 |
冬晴や細くみじかき母の影 |
| 小春日や終日めぐる古書の市 |
古暦焚けば消えゆく悔いの日々 |
| 惜しまれつ師走の通夜となりにけり |
この庭は花袋踏みしか敷松葉 |
| 日の光乗せてひらひら落葉ふる |
子らの蹴るボール冬去る野に弾む |
| 気ままなる旅に出でばや冬霞 |
絵ごころのふはり湧きたる冬田晴 |
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