夏の風邪なつく隣の子を帰す |
夏の風邪あなどり試算表合はず |
ハンカチや多感でありし日ははるか |
釣りの子に遠き鐘の音行々子 |
夏菊の鉄路に添ひし無人駅 |
病葉と焚く色褪せし手紙かな |
訪れてまづ風鈴にもてなさる |
睡蓮の生みし波紋の近づきぬ |
そこのみに闇をあつめし白牡丹 |
容赦なく襲ふ一病梅雨ごもり |
大正のロマン横溢古日傘 |
紫陽花の藍に染まりし雫かな |
病葉の地におちてよりくれなゐに |
贖罪のごと炎昼の街を行く |
鷺草の舞ひにほどよき闇の濃さ |
ポケットの中に五月の風遊ぶ |
嫁がざる娶らざる子等梅雨寒し |
短夜や叱りて消えし夢の母 |
|